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第六幕 第九場

「わたしの動機を説明したからと言って、あなたの名前をかたったことを許してほしいとは言いません」わたしは言った。「最初からあなたに罪をなすり付けるためにやったことですから。だからわたしを見逃してとはいいません。けどここにいる彼は関係がありません」そこで私は頭をさげる。「だから彼だけでいいので見逃してください」


 ウルフは何も答えなかった。しばし無言で立ち尽くしていたが、やがて動きだし地面に落ちていた拳銃を拾った。そのためわたしは撃ち殺されるのではと思い、身をこわばらせた。だがそうではなかった。ウルフは拾った拳銃をわたしに差し出してきた。


「……これはいったい?」わたしは当惑する。


「ここにはおれ以外にも危険なやつがいる、わかるな?」


 わたしはぎこちなくうなずく。「はい……」


「おれはそいつらに暗闇に乗じて不意をつかれ撃たれた。急所ははずれたが、血を流しすぎた。いまは気力だけでこうして立っている。けどおまえの話を聞いて、もうその気力は萎えたよ……」


 そう言われ、ウルフをまじまじと見つめる。黒いレインコートのせいで目立たなかったが、よく見ると拳銃で撃たれたと思われる跡がいくつか見てとれた。


「おかげでもう動けないだろう」ウルフは話をつづけた。「この体ではおまえを守れない。だが暗闇に乗じて襲われないよう、こうして電気はつけてある。だからあとは自分の身は自分で守れ。そのための銃だ、受け取れ」


 どうしてウルフがわたしの身を案じているのか理解できず、困惑しながら拳銃を受け取った。いったい何を考えているのだろうか。さっきまで殺そうとした相手に拳銃をわたすなんて。しかも勝手にウルフの名をかたり、その罪をなすり付けようとした相手にだぞ?


 けどすぐにそんな疑問は飛んでいった。いまはここからマコトとふたりで逃げられるというのならば、その心変わりの理由なんてどうでもいい、そう思ったからだ。


「……ありがとう」とりあえず、わたしはお礼を言う。


「礼はいい」ウルフは言った。「さっさとここを出るんだ」


 わたしはうなずくとマコトに歩み寄り、肩を貸して立たせてあげる。そしてふたりで出口をめざして歩き出した。


「いったい何がどうなっている?」マコトが不思議そうに言った。


「わからない。けどおかげでふたりで逃げられるわ」


 わたしたちは一度も振り返らずに、ウルフのもとを立ち去る。

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