第一幕 第八場
いちばん最初の動画ファイル、つまりはこのビデオカメラできょう最初に録画された映像が再生された。ビデオカメラの液晶ディスプレイの画面には、会議室らしき部屋が映し出された。
ビデオカメラを手に持って撮影しているらしく、画面が揺れ動いている。だがカチカチと音が聞こえると、画面は微動だにせず安定する。どうやら三脚で固定されたと思われる。
画面には白い壁を背景に、プロジェクターのスクリーンが映し出されている。ピントを合わせるかのように微調整された。
「オッケー」男の声が聞こえた。
するとほどなくして画面に下半身が見切れるようにして女が登場した。その女はスクリーンの横に立つと、写り映えを気にしているのか、しきりに短い黒髪を手ですいて整えている。それが終わるとこちらに視線をよこした。ノースリーブを着た真面目そうな女だ。
「ちゃんと撮れている」女が訊いてきた。
すると画面がズームバックし、構図を修正する。どうやら女の全身を画面に収めるつもりらしい。すぐに女の下半身が見えてきた。ショートパンツを穿いており、そこからすらりとした足が伸びている。
「オッケー」ふたたび男の声が聞こえた。
その声を聞くと女は背筋を正した。そして何度か深呼吸を繰り返すと、真摯なまなざしを画面へと向けた。
「みなさんはじめまして」女が快活な口調で言う。「わたしは自由が丘大学の生徒で、『佐藤アカネ』と申します」
女は名乗ると軽く頭をさげた。
「わたしは自由が丘大学にある、とあるサークルに所属しています。そのサークルの名前は」そこで相手の興味を引くかのようにしばし間を置いた。「ミステリー愛好会です」
女は朗らかに笑う。
「わたしたちミステリー愛好会の活動はさまざまありますが、おもな活動内容は、日本で起きたミステリアスな未解決事件の謎に迫ることです。そしてきょうはとある未解決事件のドキュメンタリー映画を撮ることとにとと」女は舌をもつれさせる。「……撮影することとにに……ことになりました」
言い終えると、女は両の手のひらを合わせた。
「ごめん、噛んじゃった。もう一回やり直しでお願い」
女がそう懇願すると、動画はそこで終了した。