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第六幕 第六場

「ええ、そうよ」小森ミクがうなずいた。「わたしがアップルよ」


「きみが……アップル?」おれは当惑した口調で言う。


「おまえがアップル……」地面に倒れているコハルは、にやけた笑みを浮かべてこちらを見あげている。「っていうかガイドみたいな格好しているけど、おまえはだれだよ?」


「あなたに説明してわたしが得をするの?」小森は怒りの形相でコハルに銃口を向ける。「それよりも答えろ。身代金を横取りしろとは指示した。けど拳銃を使って人を殺せなどと指示はしてない。けっしてだれも傷つけるな、と念を押したはずだ。どうして指示に従わなかった」


「わたしは……」コハルはそこでユイの死体を一瞥する。「わたしたちは最初からあんたには従っていない。はじめっから誘拐犯側の人間なんだよ」くすくすと笑いはじめる。「そんなわたしたちに、アップルであるあなたは近づいた。まぬけにもほどがある」


 小森は叫び声をあげると、コハルが傷口をかばうようにして手で押さえている腹へと、何度も足を踏みつける。コハルが苦悶の声をあげ、小森が泣き叫ぶ。


「何をしているんだ!」おれはすぐさま小森の腕をとると、コハルから引き離した。「やめるんだ小森さん」


「止めないでよ!」小森の目には涙があふれていた。「こいつはわたしの母さんを殺したのよ!」


「母さん?」おれは心底当惑してしまう。「だれのことだ?」


「早乙女モモコよ」小森は涙をぬぐった。「わたしはその娘なの」


「きみが早乙女モモコの娘」衝撃の事実におれは目を丸くするばかりだ。「それじゃあ詐欺師だというのは嘘だったのか?」


「あたりまえじゃない。あなたを利用するためについた嘘よ」


 おれは信じられない思いで小森を見つめる。目の前にいる人物は早乙女モモコの娘であり、そしておれを利用したアップルだ。


 おれたちがほとばしる感情にのまれて見つめ合っていると、コハルが耳障りな笑い声をあげはじめた。


「うるさいわね!」小森はコハルに拳銃を向けた。「殺すわよ」


「落ち着いて小森さん」おれはなだめるような口調になる。「こいつは誘拐犯側の人間だ。だとしたら今回の誘拐事件の真相を知っている。だから殺してはならない」そこでことばを切ると、コハルに顔を向けた。「長谷川ヒロユキの孫娘はどこにいる?」


「……長谷川の孫娘?」コハルは口元に微笑を漂わす。「いまこのグリム王国にいるよ」

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