第六幕 第五場
わたしたちの目の前に、突如として刃物を持ったウルフが現れた。だがウルフは丁字路のまがり角から出てきたばかりで、まだこちらに気づいてはいない。ウルフはわたしたちがいる方向とは真逆の道へと顔を向けた。そしてそこにだれかいないか注視している。
「隠れろ」マコトがささやいた。
わたしはそのことばに反応して、すぐそばにある生垣へと移動する。そして体を滑り込むようにして、生垣の陰へと倒れるようにして隠れた。極度の緊張から心臓が激しく早鐘を打つ。隠れたとはいえ、その姿をウルフに見られていない保証はない。
わたしは生垣の隙間からウルフを観察する。ウルフは道の左右に向けて、視線を交互に向けている。その様子から、おそらくは見つかってはいないと思われる。わたしたちがいる場所とは反対方向にウルフが行けば、助かるかもしれない。お願いこっちに来るな!
だがウルフはその願いを裏切るように、こちらに向かってくる。
「やつがこっちに来るわ」わたしは小声で言う。「奥に隠れて」
わたしにそう言われ、マコトはほふく前進する。だが足の怪我のせいで遅い。このままでは道から見られないよう、奥の物陰に隠れる前に見つかってしまう。そうなったらふたりとも殺される!
わたしは拳銃を構えると、迎え撃つ覚悟をきめた。
「何をしている!」マコトがこちらに青ざめた顔を向けた。
「だいじょうぶ」わたしは意を決した表情になる。「わたし——」
ウルフの足跡が近づき、わたしはしゃべるのをやめた。そして膝立ちになると、タイミングを見計らって生垣から飛び出した。
「動くな——」
ウルフはわたしのことばを一顧だにせず、すぐさまこちらに向かって突進する。思わず引き金を引く。だが銃弾はウルフの肩をかすめただけだ。ウルフはひるまずこちらに突っ込んでくる。急いで二発目を撃とおとしたが、その前にウルフが刃物で拳銃をたたき落とす。ついでわたしのお腹めがけて強烈な蹴りを食らわせた。
わたしが地面に倒れると同時に、今度はマコトが飛び出した。ナイフを持つウルフの腕をつかみ、それを奪い取ろうともみ合いになる。だがウルフは狡猾にもマコトの足の怪我に気づいたらしく、そこに蹴りを食らわせる。マコトは痛みに喘ぎながらひざまずいた。
そんなマコトに対して、ウルフは刃物を頭上高く掲げる。
「待って!」わたしは両手を掲げて降伏のポーズをとる。「わたしはシンデレラです! そして長谷川ヒロユキの孫娘です!」
その瞬間、マコトに向かって振りおろされた刃物が、すんでで止まった。




