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第六幕 第三場

 いまわたしはマコトといっしょに、グリム王国南側入り口をめざして歩いている。そこにある扉を使えなくしている鎖に付いた南京錠の鍵をはずし、ここから脱出するのが目的だ。


「グリム王国を出たらすぐに病院に連れていくからね」わたしは言った。「だからそれまでがんばって、マコちゃん」


「ああ、わかってるさ」マコトが息苦しそうに言う。「けど、そのあとはでアカネはどうするんだい?」


「えっ!」意表をつかれた質問に、わたしは素っ頓狂な声をあげてしまう。「……そのあとってどういうこと?」


「言いにくいが、きみは……犯罪者だ。だから、その……」


 言わんとしていることを悟った。「それはわからない。とにかくマコちゃんを病院に連れていく。そのあとのことは、そのあとで考えるわ」


「またぼくのまえから……いなくなるのか?」マコトはさみしげな顔つきで言う。「あのときみたいに?」


「あのときって?」わたしは訊いた。


「きみの母親が亡くなったときのことだよ。身寄りのないきみは、そのせいで児童養護施設へいってしまった」


「児童養護施設……」わたしは記憶の糸をたぐり寄せる。「ああ、そういえば、そうだった気がする。思い出したよマコちゃん。そのとき約束したことを覚えている?」


「覚えているよ。大人になったら結婚しようって約束だろ。ぼくは本気だった。けどきみと離れて時間が経つにつれ、もしかするときみにとってその約束は、子供のころに交わした些細なできごととして風化しているかもしれない。そうおそれていた。だからホテルできみに話しかけたとき、もしかしたら過去の思い出話として笑われてしまったら、どうしようって不安だった」


「馬鹿ねマコちゃん、そんなことあるはずないわよ」


「ああ、そうだったね。きみはぼくが偽装のためにつけていた左手の薬指の指輪を見て、すごいショックを受けていた。こっちが釈明する暇もなく、嘘つきと一方的に罵声を浴びせられたよ。そして泣いてしまった。でもそんなきみを見て、ぼくはうれしかったんだ。ぼくのことをまだ好きで、想っていてくれたことにね」


「あたりまえでしょう。だからマコちゃん、わたしはいなくなったりしない。だからわたしたちの約束をかならず——」


 行く先の建物の陰からウルフが唐突に現れ、わたしのことばを無理矢理閉ざした。

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