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第六幕 第一場

「さてわたしは逃げる手段を探すけど」コハルが言った。「もちろんアカネも、いっしょに来るでしょう?」


 わたしは返事をせず、会衆席にすわるマコトに顔を向けた。足を撃たれたせいで、その顔色は悪く息も荒い。早くここを出て、助けを求めなければいけないのは明白だ。


「ちょっとアカネ」コハルはとがめるような口調だ。「もしかして、その男も連れて行く気なの。ぜったいに足手まといになるよ」


 わたしはコハルに視線を合わせた。「マコちゃんをここに置いてはいけない。いっしょに連れていく」


 コハルは嘆かわしげに首を横に振る。「だったらわたしはひとりで単独行動させてもらうよ。巻き添えをくらうのはごめんだ」


「かまわない。マコちゃんはわたしひとりでなんとかする」


「一応警告しておくけど、そいつといっしょに行動すれば、ウルフに見つかったとき逃げられないよ」コハルはそこまで言うと、口元をにやりとゆがめる。「そいつを見捨てない限りはね」


「ええ、わかってるわよ、そのくらい」わたしはコハルに非難のまなざしを向けた。「そんなこと口にださなくてもね」


「こわいわね」コハルは微笑むと、わたしに手を振る。「それじゃあ、がんばってね。生きて出られたら、ちゃんとお金は山分けするから」


 コハルはフードと一体化したマントをひるがえし、背中に背負ったリュックを見せつけると、教会から出て行った。


「……彼女の言うとおりだ」マコトが苦々しい顔つきで言う。「ぼくがいたら足手まといだ」


「だいじょうぶだよマコちゃん」わたしは笑顔を繕う。「わたしがあなたを守るから。それにもう逃げる手段は見つかっているし」


 わたしはそう言うと、神谷の死体を探りはじめる。そして鍵を見つけ出すと立ちあがった。


「鍵はあったわ」わたしはそれをマコトに向けて掲げる。「あとはここを脱出するだけ。それだけなら、ウルフに遭遇する確率は、そう高くはないはずよ。ぜったいに逃げ切れる。だからいっしょに逃げましょう、マコちゃん」


「すまないアカネ……」マコトはそう言うと、首を横に振る。「いや、ありがとうだねアカネ」


 わたしはうなずく。「さあ、行きましょう」


 わたしは自分の肩を貸すようにしてマコトを立たせると、ふたりで教会をあとにした。

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