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第五幕 第十二場

 すべての動画ファイルを見終え、おれは自分が思いちがいをしていたことを悟った。グリム王国ツアーに参加した顔を隠した中年女性。おれはずっとその人物の正体を、長谷川ユキナだと疑っていた。だが小森ミクの推測どおり、あの人物は早乙女モモコだった。


「あの女性はきみの言うとおり、長谷川ユキナではなく早乙女モモコだったよ」おれはビデオカメラの液晶ディスプレイ画面から顔をあげると、となりにいる小森に顔を向けた。「そして残念なことに、彼女は殺されてしまった」


「……そうみたいですね」小森は暗い表情でうなずいた。「かわいそうに奥さま。こんなところで死んでしまうなんて」


「だいぶ気落ちしているみたいだね」おれは心配するような口調で言う。「だいじょうぶかい?」


「だいじょうぶです。ただ知っている人間が亡くなったものですから、ちょっとショックが大きくて……」


 そのことばに、おれは妹が亡くなったとこのことを思い出した。

「その気持ちわかるよ小森さん。けど悲しむのはあとだ。いまはこの窮地を脱出することだけ考えよう」


「そうですね」小森の表情が張りつめた。「いまは生き延びることだけを考えるべきですね」


「ああ、そうだ」おれはそう言って力強くうなずくと、手にしていたビデオカメラを坂本の手にもどした。「それにしてもこの男は何者だったんだろう?」


「たぶんですけど、おそらくは長谷川ヒロユキが雇った人間だと思います。長谷川は今回の誘拐事件からはずされ、蚊帳の外に置かれていましたから。それで探偵、もしくはそれに近い職業の人間を雇って、事件を監視していたってところですかね」


「なるほど」おれは感心したように言う。「そうなるとカオリとマコトは、その仲間ってところかな」


「妥当な線ですね」


「つまりは一般人を装い、ビデオカメラで怪しい人物がいないかどうか記録していたってことか」


「おそらくはそうでしょう」


「だからビデオカメラには、きょうの分しか動画ファイルがないわけだ。だとすると佐藤アカネの存在が、ますます怪しくなってくる。あいつも長谷川に雇われた監視者の仲間なのか?」


「坂本の発言からして、それはちがうと思います」


「いったい何者なんだ、佐藤アカネ……」

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