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第四幕 第十五場

「わけがわからない」おれはつぶやくように言う。「ウルフによる今回の誘拐事件。不可解な点が多すぎる。いったいこれは……どういうことなんだ?」


「蝶野さん」小森ミクが言った。「これ以上は考えるだけ無駄だと思いますよ。あとは当事者にしかわからない、何か特別な理由があるんだと思います。それをいまのわたしたちがあれこれ考えても、答えは出ません。いまは目の前に迫った危機を、どう乗り切るかだけに集中しましょう」


「……それもそうだな」おれは同意からうなずく。「とにかくいまはウルフを殺す。それだけ考えればいい」


「ええ、そのとおりです」小森はそう言って拳銃を掲げた。「わたしも協力しますから」


「小森さん」おれはきびしいまなざしを小森に向ける。「ほんとうにいいのか?」


 小森は覚悟を決めるかのように、目をつむり深呼吸する。そして目をあけたとき、その表情は意を決していた。

「やりますよ、蝶野さん。ただし条件があります」


「条件?」


「もう刑事でないのだから、ここから生きて出られたら、わたしのことは見逃してください」


「ああ、わかった。約束するよ」


「わかりました。では今度はわたしから蝶野さんに、その覚悟を問いただしたい」小森は真剣な口調だ。「敵はウルフ。だけどわたしはふたりのウルフを目撃しました。つまりは片方は蝶野さんのかたきではない偽物、もしくはその手口をまねたコピーキャットということになります。状況が状況ですから偽物かどうかたしかめる暇もありませんし、ふたりとも人を殺しています。そのため両者とも排除する必要があります。蝶野さんにはその覚悟がありますか?」


 質問の真意を読み取った。かたきでなくても殺せる覚悟はあるのか、と小森は問いただしている。

「覚悟はできている」おれは言い切った。


「脅威はウルフだけではありません。身代金を横取りしたレイヤーの片割れも危険です。あの魔女のレイヤーのようにこちらに危害を加える可能性があります。その場合、そいつも殺せますか?」


 今度はストレートに訊いてきた。「そのときは……殺すよ」


「わかりました。ならあとは蝶野さんに、わたしは従います」


 おれたちはお互いにその覚悟を確認し合うと、腹をくくった

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