第四幕 第十四場
教会の扉が唐突に大きな音を立てる。
その瞬間、わたしは思わず目を見開き扉へと向けた。するとそこには扉にぶつかって落ちたと思われる懐中電灯が、床の上を転がっているではないか。どうして懐中電灯が?
そう思った矢先、わたしの視界をマコトが勢いよく過ぎ去る。そのため自然とそのあとを目で追うと、マコトは扉に気をとらわれていた神谷へと体当たりを食らわせる。そのときになってようやく気づいた、あの懐中電灯はマコトが注意をそらすために投げたのだ、と。おそらくはわたしたちが言い争っている隙をついたんだ。
マコトと神谷は床へと倒れると、拳銃をめぐっての取っ組み合いがはじまった。マコトが相手の手をつかんで拳銃を奪おうとするのを、神谷が必死になって抵抗する。ふたりは体の位置を入れ替えるようにして、何度も床の上を転がる。なんとかマコトの助けになりたいが、いつ拳銃が暴発してもおかしくないこの状況おいて、わたしはあたふたしながらそれを見守ることしかできなかった。
やがて銃声がとどろいた。するとマコトの苦しげな叫び声が教会内に響き、わたしはぞっとする思いだった。
「マコちゃん!」自然と悲鳴まじりの声でそう叫んでいた。
神谷がすぐさま立ちあがると、倒れてもがき苦しむマコトに向けて銃口を向けた。
「やめて!」わたしは声の限り叫んだ。「お願い殺さな——」
突如として教会の扉があけ放たれたかと思うと、ふたたび銃声がとどろき、神谷が膝をついた。神谷はその手から拳銃をこぼれ落とすと、撃たれたと思われる腹を押さえた。
間髪入れず銃声が聞こえ、神谷がのけぞるようにして倒れた。
「だいじょうぶだったアカネ」
そう言って何者かが教会内にはいってくる。視線を向けるとそこには赤ずきんに扮した女の姿が。その人物には見覚えがある。
「あなたは……コハル?」問いかけるように、その名をつぶやいた。
「うちの相方が余計なことをしたせいで、プランどおり計画が進まなくて悪かったわ」コハルは平然とした態度でそう言うと、死体となった神谷をあごで示す。「でもこいつらをうまく利用して切り捨てるにしても、もっとうまい手があったんじゃないのかしら」
そのことばに、身をこわばらせた。わたしはこれ以上何を……。
「それよりも大変よ」コハルが言った。「あなたたちがウルフのまねごとなんかするから、本物のウルフがここにやってきたわ」
わけがわからない、とわたしは思った。思考はもはや停止寸前だ。




