表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/99

第四幕 第十二場

「扉を使えなくしたのは、あなたの仕業だったのね」わたしは緊張した面持ちで相手を見つめる。


「あたりまえだろ」神谷は言った。「プランFを実行した」


「プランF?」


「いつまでとぼけるとつもりだ」神谷は語気鋭くさせる。「この誘拐事件を成功させるために、あらゆる事態を想定していくつものプランを考えただろ。プランFはおれたちの逃走時間を稼ぐために、扉を使えなくする手段だ。もっとも外側でなく内側に鎖を巻いて、自分たちごと閉じ込めることになるとは思わなかったけどよ」


 たしかにそうだった、とわたしは思った。おもわぬアクシデントにそなえて、いくつものプランをわたしが……計画した?


 ……何を考えているんだ、わたしは。まさかほんとうにそうなのか。どうしてそう思ったのかはわからない。もしかして神谷の話によって記憶が想起され、よみがえってきているのだろうか?


「まったくほんとうだったら、こんなくだらない格好せずに楽に金が手に入るはずだったのによ」神谷は話をつづける。「それなのに想定外の出来事ばかり起きるし、おまえたちはどこかに消えてしまうし、散々な目にあった。おかげでアリバイ作りやトリックのための準備がすべて台無しだ。あのくだらないドキュメンタリー映画を撮影した苦労もぱあだよ」


 蝶野が指摘したとおり、あのドキュメンタリー映画はきょうこの日のために撮影したものらしい。おそらくは何かが起きたときのために、アリバイか何かに利用するつもりだったのだろう。例えば三人で撮影していると思わせて実はふたりしかおらず、残りのひとりがこっそり身代金を回収する、といった具合にだ。


「もう疲れた」神谷は暗鬱なため息をついた。「だから終わりにしようアカネ。さっさとここを出て、長谷川にシンデレラと名乗り出ろ。ことわるのなら、そこにいるおまえの男を殺す。それでも従わないのなら、おまえも殺す」そこで目をぎらりとさせる。「言っておくが本気だぞ。おれは人を殺してしまった。こうなったら何人殺すのも同じだ」


 神谷の目に宿る狂気を見てとり、わたしはそれがほんとうだと悟った。神谷は躊躇なくわたしたちを殺すだろう……。


「どうした返事をしろよ」神谷は言った。「それとも長谷川にシンデレラだと名乗りたくない理由を、ようやう教えてくれるのか?」


「……わかった。あなたに従うわ。ここから——」

 やにわに教会のドアが音を立て、わたしのことばをさえぎる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ