表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/99

第四幕 第九場

「とりあえずウルフが自分の娘を利用して、狂言誘拐を実行していることはわかった」おれは言った。「けどなぜやつはここで無差別殺人をおこなっているんだ?」


「蝶野さん」小森ミクが言う。「それはたぶんですけど、身代金を横取りされたからだと思います」


「身代金を横取りだと?」


「はい、そうです」小森はうなずく。「実を言うと、わたしも身代金を横取りしようと考えた人間のひとりで、それを奪って雲隠れするつもりだったんです。けれど指定された場所へ行ったら、ウルフとあのレイヤーたちが銃撃戦を繰り広げていたんですよ」


「なんだって!」おれは思わず声を荒らげた。


「二対一でしたので、そのうちウルフが逃げ出し、レイヤーたちが身代金を奪って逃走したんです」


「なるほど。それでやつはレイヤーを殺したんだな……」そこまで口にして、おれは首をかしげる。「ってちょっと待ってくれ。レイヤーが殺される理由はわかったが、ほかのやつらはどうなるんだ。ウルフに殺される理由がないぞ」


「あの蝶野さん、信じられないと思うんですけど」小森はそこで声の調子を落とした。「いまこのグリム王国には、ふたりのウルフがいます。たぶんまちがいありません」


「……そんな馬鹿な」おれはにわかには信じられなかった。「やつは単独犯だぞ。それはこれまでの事件からあきらかだ」


「でもわたし見たんです。刃物を持って徘徊するウルフ、やつは右利きだった。でも拳銃を持っていたウルフは左利きでしたよ」


「ウルフがふたりいる?」おれは眉根を寄せた。「いや、ありえない。やつは単独犯……だけど、ふたりいる。どういうことだ?」


「もしかして片方は偽物なのかも」


「偽物……あるいはコピーキャットなのかもしれない。どっちにしろやっかいだ」おれはため息をついた。「ただでさえやっかいな状況なのに、混乱させやがって。そもそもあのレイヤーはなんだ。なんで身代金があることを知っていた」そこではっとする。「そういえばアップルだったな。やつらもおれと同じで、アップルが呼び寄せた……のか?」


「あのですね、蝶野さん。アップルについてですが、わたしはその正体に見当がついています」


「アップルがだれなのかわかるのか!」思わず声を大にする。


「たぶんですけど、アップルの正体は早乙女モモコだと思います」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ