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第四幕 第六場

「心配してたんだぞ」狼マスクを脱いだ男が言う。


「心配していた……?」わたしはそのことばに困惑させられてしまう。「もしかしてわたしのことを?」


「あたりまえだろ!」男は矢継ぎ早に話しだす。「停電になるわ、電話はつながらないし、時間になってもだれもこない。しかたがないからひとりで指定した場所に行ったら、コスプレ女どもと銃撃戦になるわ、しかも金は奪われるし、ようやく探して見つけ出したと思ったら、今度はおまえがそのコスプレ女に殺されかけている。そいつを撃って助けたかと思いきや、こんどはこの男につれさらわれるわで、こっちはもう気が気じゃなかったぞ」


 男はいい終えると、どっと息をつき、顔に浮き出た汗をぬぐった。その表情は疲労困憊といった様子で、精根尽きたかのように見えるも、どこか緊張感で張りつめているように思えた。


「おいアカネ!」男が声を大にする。「久保田はどうした。やつはどこにいる? いっしょじゃなかったのか」


「えっ?」


「えっ、じゃないよ。ちゃんと答えてくれ。久保田はどうした?」


 わたしはとまどいながら言う。「久保田なら……殺されたわよ」


「ちくしょう!」男が床を踏み鳴らした。「あのコスプレ女どもに殺されたんだな!」


「いえ……ちがう」わたしは弱々しく首を横に振る。


「はあ?」男は顔をしかめた。「じゃあ、いったいだれに殺されたんだよ」


「それは……」わたしはこの先を言うのをしばしためらう。「あなたに殺された」


「何馬鹿なことを言っているんだ!」男が怒りの声をあげた。「おれが仲間を殺すはずないだろう」


「仲間?」


「ああ、そうだ。おれたちは仲間だろうがよ」


 わたしはおそるおそる質問する。「仲間ってなんのこと?」


「こんなときに何ふざけているんだ、おまえは!」男は苛立ちの口調になる。「おれたちは長谷川の孫娘を誘拐した仲間同士だろ」


 そのことばに、わたしはトラックに轢かれたかのような衝撃を受けた。「ど、どうして……長谷川の孫娘を誘拐したの?」


「どうしてって?」男は悪い冗談でも言われたかのような顔つきになる。「それはおまえがシンデレラだからだろ」


「わたしがシンデレラ?」わたしはあごをがくりと落としてしまう。

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