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第四幕 第五場

「きみがシンデレラだったのか?」おれは呆然とつぶやいた。


「ええ、そうよ。わたしはシンデレラ」小森ミクはかけていた眼鏡をはずすと、口元に微笑を漂わす。「正確に言うのならシンデレラになる予定の女よ」


「なる予定?」おれは意味がわからず眉をひそめる。


「一億円というシンデレラの懸賞金」小森はしゃべりながら着ている服をいじりだした。「その高額な大金に目がくらんで何十人、何百人の女どもが長谷川のもとへ押し寄せた。だがそいつらは詐欺師で長谷川から大金をだまし取ろうとした。だけど警察犬の嗅覚の前にあっけなく敗北。けどわたしはその程度ではあきらめない」


 小森は着ている服の胸元を引っ張り、その谷間を大きくさらけ出すと、そこから手を入れて服の内側をいじりだした。


「わたしは小森ミクとして変装してフェアリーリゾート社にもぐりこみ、シンデレラが残していった片方だけの靴を、わたしのにおいが染み付いた偽物とすり替えるつもりだったの。相手が警察犬の嗅覚を利用してシンデレラか否かを判断するなら、逆にそれを利用してしまえばいい。逆転の発想でしょう」


 小森は着ていたフリルブラウスをワンピースごと肩からはずすように脱ぎ、その上半身をあらわにした。その体は胸に着用したブラジャー以外の部分に、肌色をした布らしき物が巻きつけられている。おそらくは体形を隠すための物だろう、とおれは察した。


「つまりはきみは……詐欺師なのか?」


「そのとおり。あんたが刑事だったら打ち明けなかったが、もう警察をやめたのなら話は別……ちょっと蝶野さん」小森が着替える手を止め、こちらに非難のまなざしを浴びせる。「何見ているのよ。人の着替えをのぞくのが趣味なの。あっちをむいててよね」


「す、すまない」おれはあたふたと小森に背を向ける。


 そこから先は、小森が無言で着替える音だけが聞こえた。


「もうこっちを向いてもいいわよ」


 おれは小森に向き直る。そこにいたのは先ほどまで見ていた人物とは別人だ。着ている服は同じだがそのスタイルはよく、眼鏡をしていないその顔はしゅっとしており、ショートヘアーの髪型とよく似合っている。まるでモデルのようだ。


「さてと蝶野さん」小森が意味深な笑みを浮かべる。「いまここで何が起きているか、あなたに教えてあげるわ。連続誘拐殺人鬼ウルフによる長谷川ヒロユキ氏の孫娘誘拐事件よ」


「なんだって!」おれは思わず驚きの声をあげた。

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