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第四幕 第四場

 わたしとマコトが隠れている懺悔室へと、ウルフが片手で拳銃を構えながら警戒するようにゆっくりと近づいてくる。そのため心臓の鼓動が一気に跳ねあがった。息づかいが荒くなる。


「安心してアカネ」マコトがささやく。「ぼくがなんとかする」


「でもどうやって?」わたしは恐怖で声を振るわせる。「相手は銃を持っているのよ。かないっこないわ」


「だいじょうぶだ、まかせて」


 マコトはそう言うと、懺悔室のドアに両手をつけた。それを見てわたしは悟る。ウルフがドアをあける瞬間を狙って、ドア越しに突き飛ばす気なんだと。


 そうこうしているとウルフが懺悔室の前にやってきた。そしてドアをあけるべく、その取っ手に向かって右手を伸ばす。


 その瞬間、マコトは力一杯にドアを押した。だが異変を察知したのか、ウルフは機敏な動きで後ろに飛び退る。そのためドアはあけ放たれ、わたしたちふたりは丸見えになってしまった。


「動くな!」ウルフが叫ぶ。それは男の声だった。


 殺される、とわたしは思った。もうおしまいだ!

 だが予想に反してウルフは拳銃を発砲する様子はない。ただ静かにこちらの様子を観察している。


「おい、そこの男」ウルフが言った。「頭の後ろで手を組んで、そこから出てこい。妙な動きをしたら撃つからな」


 マコトは苦々しい顔つきで頭の後ろに手をまわすと、ゆっくりと懺悔室から出る。


「壁に向かってひざまずけ」ウルフが追加の指示をする。「そしたら前だけを見ていろ。振り向いたら撃つ。いいな?」


 マコトはうなずくと、指示どおりに壁に向かってひざまずいた。


 ウルフがわたしを視線を向ける。そのためわたしは射すくめられ、体を震わせた。これから何が起きるのか考えただけで、恐ろしくなってしまう。


 ウルフは着ていたレインコートのフードを頭からはずす。するとかぶっていた狼マスクを脱ぎはじめた。予想外の出来事にわたしは困惑させられた。いったい何をするつもりなの?


 ウルフが狼マスクを脱ぎ終える。そこに現れたのは若い男の顔だった。体育会係を思わせるあごの引き締まった短髪の男で、その目つきは鋭くて人相が悪い。まさに極悪人だ、とわたしは思った。


「もうだいじょうぶだアカネ」男は言った。「おまえを助けにきた」


「えっ!」予期せぬことばに、わたしは素っ頓狂な声をあげた。

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