第四幕 第二場
わたしはマコトに手を引かれるようにして、必死に走っていた。ウルフが拳銃を持って、わたしたちを追いかけてくる。追いつかれたら殺されてしまうのは自明だ。
わたしは後ろを振り返って、ウルフの姿をたしかめようとする。だがそのせいで足を滑らせ体勢を崩し、生垣へと体をこすりつけた。そのまま転びそうになるのを、マコトがわたしの手を強く引くことで体勢を立て直す。
「何やってんだよアカネ!」マコトが怒鳴った。「いまは前だけを向いて走れ。せっかく明かりがついているんだから」
そのとおりだ、とわたしは思った。いまは後ろを気にしている余裕はない。とにかく走らなければ助からない!
わたしたちは走りつづけた。つないだ手が血と汗で滑りやすくなるが、マコトはけしてその手を離さない。撃たれて痛いはずなのに。
やがて行く先に教会とクレイジー石原の死体が見えてきた。するとマコトはわたしを明かりのついた教会の中へ導く。
マコトは教会の中を見まわすと、壁際にあった懺悔室へと向かう。そのため石原のビデオカメラで観た映像が脳裏をよぎる。
「あそこはだめよマコト!」
「もうここしかない!」
マコトは懺悔室のドアをあけるとわたしを押し込み、そのあとに自分もつづく。ここにはいるのはきょうで二度目だ。
わたしたちは息を弾ませながら、せまい懺悔室の中で密着する。そのため血と汗のにおいが鼻孔をくすぐる。
「だいじょうぶか?」マコトが小声でささやいた。
わたしはうなずいた。「それよりもあなたの手のほうは?」
「銃弾がかすっただけだ。このくらいなら——」
教会のドアの開く音が響き、わたしたちはしゃべるのをやめた。マコトがドアにある窓のカーテンを少し引いて中の様子をうかがう。そこにはウルフの姿が。ウルフはゆっくりと教会の中へと進んだ。
もうおしまいだ、とわたしは思った。見つかってしまう!
だがウルフは教会の真ん中まで進むとあたりを見まわし、それからきびすを返した。こちらを気にかける様子はない。
助かるかもしれない。そう思ったそのとき、懺悔室の床に何かが落ちて音を響かせた。驚いて視線を向けるとそれはスマートフォンだ。よく見るとわたしが着ているパーカーのポケットが破れている。おそらくは先ほど転びかけたときに生垣にひっかけて破いたらしい。
教会の中へと視線をもどすと、ウルフがこちらに顔を向けていた。




