幕間 その三
ビデオカメラは依然として、長谷川ヒロユキに視線を据えていた。その行動をつぶさに記録しつづける。
「妻が亡くなり、娘もわたしのもとから去った。わたしの人生において最悪の時期が訪れた。ほんとうにつらく惨めな日々だったよ。わたしはその苦しみから逃れるように、仕事に没頭した。そうしているあいだは、つらいことを考えずにすんだからな。そして気がつけば、いつのまにか社長になっていたよ。だがどんなに地位や名誉を築きあげようが、その心は空虚でむなしかった……」
長谷川は重苦しいため息をつくと、弱々しく首を横に振る。
「そんなある日、わたしは早乙女モモコと知り合うことになった。彼女とはお互いに結婚相手を病気で亡くしたという共通点から、その悲しみを分かち合い、すぐに意気投合することになった。そしてわたしは安らぎが欲しくて、おのれの罪から目をそらし、彼女と再婚したよ」
長谷川はそこで間を置いた。
「彼女との結婚生活は、わたしの人生にふたたび光を与えてくれた。彼女はわたしを愛し、わたしもまた彼女を愛した。そして彼女の連れ子である『ノゾミ』を、わたしは自分の実の娘のように愛した。そしてその子もまた、わたしのことを実の父親のように慕ってくれた。とても幸せだったよ、シンデレラ事件が起きるまでは……」
長谷川は杖を使って椅子から立ちあがると、ゆっくりと移動をはじめる。ビデオカメラはその姿を追って体を回転させるようにして、長谷川を画面にとらえつづける。すると長谷川の行く先にソファーとテーブルが現れた。
長谷川はソファーにすわると、テーブルの上に置かれた片方だけのスニーカーとハンカチに目を落とした。
「シンデレラ事件が起き、ハンカチに残された三滴の血をDNA鑑定したことにより、わたしは恐ろしい真実を知ってしまった。だからその罪をあがなうために、わたしの孫娘とされている人物を必死に探したよ。でもそんなわたしの行動は、モモコやノゾミにとっては不快だったのだろう。その証拠にノゾミはこの靴の情報をマスコミにリークし、シンデレラの捜索を妨害しようとした。わたしはそれを従業員の仕業だということにし、その事実をもみ消したがね」
長谷川は居住まいを正すと、こちらに視線を向けた。
「わたしは愚かな父親だ。娘たちをことごとく不幸にしてしまった。おそらくふたりともわたしを恨んでいるんだろう。だからこそいまここで罪を告白し、その真実を知ってもらいたい」




