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第三幕 第十五場

 いまわたしはマコトとともに、目的を達成するために暗闇のグリム王国を移動している。ウルフに見つからないよう懐中電灯を使用せず、わたしはビデオカメラの暗視撮影機能を利用して移動しているが、マコトのほうは夜目が利くらしく、この暗闇のなかを何も使わず平気で歩いている。


 わたしたちの移動の目的は三つ。


 ひとつは南側入り口以外に出入りできる場所がないか探すこと。しかしながら、ツアーガイドのことばどおりなら望みは薄い。


 ふたつ目は、はしごやロープなどを探し出して、それを使って壁を越えて外へと脱出すること。これもまた望みが薄い。そんな物が残されているとは考えにくいし、仮にもしあったとしても、あの高い壁の高さに足りるとは思えない。


 三つ目は蝶野コウジを捕まえること。これがこの窮地から逃れる現在もっとも有力な方法だと結論が出た。


 わたしたちは暗闇のグリム王国を進みつづけ、やがて行く先にブレーメン広場が見えてきた。するとわたしたちとは反対方向から、ブレーメン広場へとやってくる人影の姿が。その人物は足を引きずっている。そのためすぐにその正体がわかった。


「マコト」ささやき声で言う。「蝶野がいたわ」


 先を行くマコトが足を止め、わたしのもとに近寄ると、ビデオカメラの画面に目を向けた。わたしは蝶野とおぼしき人影に向かってズームアップする。すると画面には拳銃とビデオカメラを構え、足を引きずりながら歩く蝶野が映し出された。そしてその後方には、そのあとについてくる女性らしきぽっちゃりとした人影が。こちらもビデオカメラを手に構えている。


「あの男が蝶野か?」マコトが訊いた。


「ええ、そうよ。けどだれかといっしょにいるわ」


「あの体形はおそらくツアーガイドだ。たしか小森とかいう名前だったはず」


「ガイドの女がどうして蝶野と?」


「さあ、わからない。けれどそれは些末な問題にすぎない。いま蝶野が拳銃を所持している、それがわかればじゅうぶんだ。やつから拳銃をうばい、それをウルフへの対抗策にする。それが現時点でいちばんの方法だ。やるぞアカネ」


「わかったわマコト」


 わたしたちは蝶野から拳銃をうばうべく、すぐさまブレーメン広場へと動き出した。

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