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第三幕 第十三場

 つぎの動画を再生した。画面にはライトアップされたグリム王国を背景にマコトが映し出されている。マコトは落ち着かなげな様子で、あたりにせわしなく視線を走らせていた。


「マコト、そう緊張しないで」カオリの声が聞こえた。「それじゃ、まるで不審者よ。もっと自然にできないの」


 マコトはこちらに顔を向けた。「ああ、ごめん……」


「どうしたの、いつものあなたらしくないわよ」


「そうかな」マコトはぎこちない笑みを浮かべる。


「もしかして何かあったの?」カオリが語気鋭く訊いてくる。


 マコトは視線をそらした。「いや、べつに……」


「ねえマコト、ひとつ約束してほしいの。何があってもわたしのもとを離れないでね」


「そんなことわかっているよ、カオリ」マコトは依然として視線を合わせない。


「ほんとうにわかっているの?」カオリはとがめるような口調になった。「あなたが勝手なことをすれば、わたしだけじゃなく『先生』にまで迷惑なんだからね」


「ああ、わかってる」マコトは上の空で返事をする。


「……ねえ、マコト。あなたには悪いと思ったんだけど、わたし見ちゃったんだ」


 そこでようやくマコトが視線をこちらに向けた。「何を?」


「あなたがホテルの中庭で女と——」


 つぎの瞬間、あたりが暗闇に包まれ、カオリのことばを押しとどめた。画面がぶれ動き、混乱している様子が見てとれる。


「ちょっとこれは何!」カオリが叫んだ。「何が起きたの?」


 しばし混乱した様子がつづいたが、やがて暗視撮影モードに切り替えたらしく、画面が緑色の濃淡の世界へと変貌する。そしてあたりを見まわすように画面が動き出した。だがそこにいたはずのマコトの姿はなかった。


「あの馬鹿!」カオリが舌打ちする。「言ったそばからいなくなるやつがあるか。夜目が利くからって勝手に消えやがって。早く先生に連絡しなくちゃ」


 画面がゆっくりと降下し、地面と同じ高さになると、カオリの足下だけを映し出した。するとカオリが電話をしようとするがつながらず、いらだつ声だけが聞こえてくる。それがしばらくつづく。


 突然カオリのうめき声が漏れ聞こえたかと思うと、その体がビデオカメラに向かって崩れ落ちて衝突し、そこで動画は終了した。

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