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第三幕 第七場

 いまおれは小森ミクに肩を借り、ビデオカメラの暗視撮影機能を利用して移動をしている。行く先をビデオカメラで確認しながら進み、ときおり背後を警戒する。

 そうやって慎重に進んでいると、ほどなくして行く先にだれかが倒れている姿が見えてきた。そのため心臓の鼓動が激しくなる。


「あれが見えるか小森さん?」おれは小声で訊いた。


「ええ、だれか倒れていますね」小森も小声で答える。「……死んでいるのでしょうか?」


 ビデオカメラを操作しズームアップするも、やはり距離があるため、その人物が生きているのか、死んでいるのかわからない。


「どうします蝶野さん?」小森は不安げな口調だ。


「……おれは刑事であり警察の人間だ。あの人をほっておくことはできない。見に行くぞ」


「わかりました」


 おれたちはその人物のもとへと近づいた。倒れていたのは二十代半ばと思われる女で、のどを引き裂かれすでに死亡していた。


「……死んでいますね」小森はおびえた声音で言う。「これもウルフとかいう殺人鬼の仕業ですか?」


「ああ、おそらくは——」そこまで言いかけたところで、おれはある物を見つけてしまい、そのことばを飲んだ。なぜならば倒れている女のそばにビデオカメラが落ちていたからだ。おれは小森の肩にまわしていた腕をはずすと、そのビデオカメラを拾いあげた。


「それもビデオカメラですか?」小森が訊いた。


「たぶんこの女の物だ。こいつの中身をいますぐにたしかめたい」


「こんなときにですか?」小森は信じられないっといった様子だ。


「ウルフは電波妨害をおこなっている。つまりはここで計画的殺人を実行しており、ツアー参加者を殺す何らかの理由があるはずだ。だからツアー参加者がどんな人間だったのかを知りたい。そうすればやつの狙いがわかるかもしれない。だから隠れ場所はいったんあきらめて、トイレにもどろう」


「……わかりました」小森は不承不承ながらも同意する。


 おれたちは引き返すと、女子トイレの個室に隠れた。小森は負傷したおれを便座にすわらせるとそのそばに立ち、おれがいじるビデオカメラの画面をのぞき込む。そのため個室は狭苦しく感じる。


 動画ファイルは時系列に一列に並んでおり、その日付はすべてきょうのものだ。いちばん古い動画ファイルが先頭にきていた。


 おれはさっそく先頭の動画ファイルを再生する。

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