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第二幕 第十場

 動画を見終え、わたしはビデオカメラの液晶画面から目をあげると、蝶野に顔を向けた。


「蝶野さん、これで終わりみたいです。ほかの動画ファイルは日付が一週間以上前のものですし、たぶんいまここで起きている事とは関係ないと思います」


「そうか……」蝶野は深刻そうな顔つきになる。「これだけでは、連続誘拐殺人鬼であるウルフがなぜここで殺人を犯しているのかわからない。けど、いまこのグリム王国にいる人間が関係していると、おれの感が告げている」


「ほんとうに……そうなんでしょうか? 相手は頭のいかれた殺人鬼なんですよね。その行為に意味はないのかもしれませんよ」


「いや、あるはずだ」蝶野は言い切った。「でなければやつは、こんな面倒なことはしないはず」


 わたしには、蝶野が自分の考えに意固地になっているように思えてしまう。


「とりあえず話をまとめてみよう」蝶野が言った。「グリム王国の夜の見学ツアーに参加した客は十人。自由が丘大学のミステリー愛好会の三人。きみに久保田に神谷。ほかにはお笑い芸人の石原。レイヤーのユイとコハル。猟師と名乗った坂本。あとは男女のカップルに、中年の女性。これで全員。そしてツアーガイドの小森ミクを加えれば合計で十一人だ」


「そうなりますね」


「これにおれと、車でここにやってきたと思われる人物を足せば、このグリム王国には最低でも『十三』人の人間がいる。そのうちのふたりはすでに殺害された。石原、それに顔は確認できなかったが男性と思われる人物だ」


「そう言えばあの殺された男の人は、どうしてウルフに近づいて話しかけたんでしょうかね?」


「……さあ」蝶野は首をかしげた。「石原と同じでどっきりイベントだと思ったんじゃないのか。そんなことよりも、これからどうするか考えよう。やはりツアー参加者を探しだして、助けを求めるのがいちばんだと思うんだが。どう思う佐藤さん?」


「わたしもそれがいいと思うんですけど……、もしも車でやってきた人物や、そのあとでやってきたであろう人物がウルフではなかったとしたら」わたしはそこで声を強める。「ツアー客の中にウルフが紛れ込んでいた可能性は考えられないでしょうか?」


 わたしのそのことばに、蝶野は目を丸くした。

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