第二幕 第七場
動画を見終え、わたしは状況を整理しようとつとめた。
「どうやらわたしたちは十一人で、ここに来たみたいですね」
「そうらしい」蝶野が同意のうなずきを返す。「となると、途中でここから抜け出したりした人間がいなければ、いまこのグリム王国にはおれを含めて最低でも『十三』人の人間がいることになる」
「最低でも?」わたしは眉をひそめた。「それはどういう意味ですか、蝶野さん」
「おれはここへ来る途中、グリム王国へと向かう車を見かけ、それを追いかけてここまで来たんだ。その車はグリム王国の南側入り口のそばに停まっていた。おそらく乗車していた人間はグリム王国の中へ、はいったんだと思う。けど車に何人の人間が乗っていたかは、確認できなかった。だから最低でも十三人だ」
「そいつですよ」わたしは声を強めた。「その車に乗ってきたのがウルフにちがいありません。やつは車でここに駆けつけ、扉を使えなくし、そして殺人をはじめたんです」
「ちょっと待ってくれ。もしそうだとしたら、おれはグリム王国の中には、はいれなくなるぞ」
「えっ……あれ」わたしは顔をしかめた。「たしかにそうなりますね。つまりこれはどういうことなんでしょう?」
「……わからない」蝶野は眉根にしわを寄せる。「もしかすると、自分が中にはいったあとで、ほかにだれかが侵入して扉を使えなくした可能性がある。もしそうだとすると、そいつがウルフである可能性が高いが……だとしたらおれが目撃した車は、なんのためにここへ来たんだ?」
わたしは考えてみるも、何も答えは導きだせない。自分の置かれた状況がわかるにつれて、謎も深まっていく。未だに自分の記憶がもどらないのがもどかしい。記憶がもどれば、何かわかるかもしれないというのに。
「これ以上は考えても何もわからないだろう」蝶野が言う。「判断材料が足りない。ここはクレイジー石原が何か有益な情報を撮影していることに賭けて、ビデオのつづきを観るとしよう」
「わかりました」
わたしたちはつづきの動画ファイルをたしかめた。だがそれらはグリム王国を紹介する内容で、ミステリー愛好会の撮影した内容とかぶっている。そのため早送りで飛ばしながら、何か有益な情報はないかと探す。撮影された日時を逆行しながら確認する動画ファイルは、やがてとある映像へとたどり着くことになる。




