表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/99

第二幕 第七場

 動画を見終え、わたしは状況を整理しようとつとめた。

「どうやらわたしたちは十一人で、ここに来たみたいですね」


「そうらしい」蝶野が同意のうなずきを返す。「となると、途中でここから抜け出したりした人間がいなければ、いまこのグリム王国にはおれを含めて最低でも『十三』人の人間がいることになる」


「最低でも?」わたしは眉をひそめた。「それはどういう意味ですか、蝶野さん」


「おれはここへ来る途中、グリム王国へと向かう車を見かけ、それを追いかけてここまで来たんだ。その車はグリム王国の南側入り口のそばに停まっていた。おそらく乗車していた人間はグリム王国の中へ、はいったんだと思う。けど車に何人の人間が乗っていたかは、確認できなかった。だから最低でも十三人だ」


「そいつですよ」わたしは声を強めた。「その車に乗ってきたのがウルフにちがいありません。やつは車でここに駆けつけ、扉を使えなくし、そして殺人をはじめたんです」


「ちょっと待ってくれ。もしそうだとしたら、おれはグリム王国の中には、はいれなくなるぞ」


「えっ……あれ」わたしは顔をしかめた。「たしかにそうなりますね。つまりこれはどういうことなんでしょう?」


「……わからない」蝶野は眉根にしわを寄せる。「もしかすると、自分が中にはいったあとで、ほかにだれかが侵入して扉を使えなくした可能性がある。もしそうだとすると、そいつがウルフである可能性が高いが……だとしたらおれが目撃した車は、なんのためにここへ来たんだ?」


 わたしは考えてみるも、何も答えは導きだせない。自分の置かれた状況がわかるにつれて、謎も深まっていく。未だに自分の記憶がもどらないのがもどかしい。記憶がもどれば、何かわかるかもしれないというのに。


「これ以上は考えても何もわからないだろう」蝶野が言う。「判断材料が足りない。ここはクレイジー石原が何か有益な情報を撮影していることに賭けて、ビデオのつづきを観るとしよう」


「わかりました」


 わたしたちはつづきの動画ファイルをたしかめた。だがそれらはグリム王国を紹介する内容で、ミステリー愛好会の撮影した内容とかぶっている。そのため早送りで飛ばしながら、何か有益な情報はないかと探す。撮影された日時を逆行しながら確認する動画ファイルは、やがてとある映像へとたどり着くことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ