表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/99

第一幕 第十九場

 つぎの動画ファイルを再生した。画面には明かりに照らされたグリム王国の姿が映し出された。どうやら場所は南側入り口のすぐそこにある広場のようで、昼に撮影したとき同じ構図で女が立っている。ちがいといえば夜になり野外照明に明かりがついていることと、女が薄手のパーカーを羽織っていることだけだ。


「こんばんは、佐藤アカネです」女が言った。「いまわれわれミステリー愛好会は見学ツアー夜の部に参加し、夜のグリム王国にやってきたところです」


 女はぐるりとあたりを手で指し示す。


「見てください、華麗にライトアップされたグリム王国を。昼とはまたちがって退廃的な趣があります。さらには昼の部と比べ参加人数が減ったこともあり、いま現在こちらはとても静かです。まるでだれもいないゴーストタウンにでも迷い込んでしまったかのように、錯覚してしまいそうです」


 女は手に巻いていた腕時計に目を落とした。


「現時刻は七時半。これから一時間後の八時半が経営中のグリム王国の閉園時間でした。シンデレラはその閉園間際に骨壺がはいった箱をグリュック城の前に置いて立ち去りました、自身が履いていた片方の靴を残して」


 しばし女は口をつぐむ。すると画面がその顔に向かってアップされる。


「シンデレラが何を思い、何を考えてそのような行動に出たのでしょうか。われわれはその謎を考察するため、シンデレラが過ごしたであろう夜のグリム王国を探索し、そして最後にグリュック城をめざしたいと思います」


 女がそう言うと、動画はそこで終了した。


 そこから先の動画は短い映像の連続だった。グリム王国内にある建物や施設を巡り、それらを女がひと言添えて説明する。その繰り返しだった。


 どうやら昼に撮影したグリム王国の名所スポット、それらの夜の姿を紹介したいらしく、すでに見覚えのある建物や施設がつづいていく。


 だんだんと未再生の残りの動画ファイル数が減りつづけ、そしてとうとう残り最後のひとつとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ