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第一幕 第十六場

 つぎからの動画ファイルは短い映像記録がつづいた。


 まず最初に映し出されたのが、グリム王国の案内板だった。その表面は錆び付いて劣化しており、ところどころ見づらい部分があるものの、そのおおよその全体図は把握できる。南側入り口にある広場から北へ進むと中央のブレーメン広場へと出る。そこからさらに北上するとグリュック城へと突きあたる。どうやら遊園地エリアは西側に位置しているようだ。


 案内板を映した映像にはだれも登場せず、無言のまま三十秒ほどで終わった。

 つぎの映像では南側入り口の広場を背景に女が立っている。


「どうも佐藤アカネです」女が言った。「われわれミステリー愛好会は、ついにシンデレラ事件が起きたグリム王国へとやってきました。わたしがいま立っているこの場所は、南側入り口からグリム王国にはいってすぐの広場です」広場を手でぐるりと指し示す。「シンデレラ事件の現場となったグリュック城をめざす前に、グリム王国内にある施設などを軽く紹介していきたいと思います。もしかすると事件の真相に至るヒントがあるかもしれませんからね」


 女がにっこりと画面に微笑みかけると動画は終了した。

 つぎの映像には遊園地エリアが映し出された。だが人はおらず閑散としている。


「だれもいませんね」そう言って女が画面に登場する。「それもそうですね。せっかくグリム王国に来たのに、こんなどこにでもありそうな、しかもスケールの小さい遊園地なんてだれも見に来ませんよね。ではつぎに行きたいと思います」


 女がそう告げると動画は終了した。

 つぎの映像も、そのつぎもそうだった。グリム王国内にある建物や施設などを映し出し、女がひと言を添えて説明する。


 この繰り返しがつづけられた。


 やがてグリム王国内にある名所スポットをあらかた紹介し終えると、最後にブレーメン広場が画面に映し出された。


 画面の中央では台座の上に、ロバ、犬、猫、鶏の順番でそれぞれの背に乗るブレーメン像が建っていた。その横には女が立ち、それを笑顔で見つめている。


「最後に紹介するのはここブレーメン広場」女はそう言うと、となりに建つ銅像を指差した。「そしてこのブレーメン像です」


 画面がズームバックし、広場を一望するかのような構図になると、動画はそこで終了した。

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