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異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー  作者: 心労の神狼
第0章 人生の終わりと物語の始まり始まり
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0-4 世界と『ギフト』

「…は?」



たった今、自分の聞いた言葉に思わず思考が停止しかけた朝日。

待て、こいつは今何と言った?異世界?おいおい、そんなアニメやラノベじゃあるまい、有り得ないだろ。といった思考が頭の中を占拠していた。


「信じられないと思いますが、異世界は実在します。アナタ方のいた世界とは別の次元に、ですが」


どうやら思考を先読みされたようだ。

口に出す前にこちらの考えを否定してきた。


「にわかには信じがたいが…」


そう言って朝日が唸っていると、そこにおずおずと手を挙げるものが現れた。


「あの、質問いいですか?」


それは先ほどまで涙を流していた目元を真っ赤に腫らした勇二だった。

女神はコクンとうなずき続きを促す。


「えっと…貴女は本当に神様なんですよね?」

「ええ、一切の疑念を残すことなく完全無欠に女神です」

「だったら…」


途中まで言った勇二は一瞬だけ言葉を選ぶように視線を宙にさまよわせ、一呼吸いれると、すぐに続きの言葉を口にした。



「女神さまの力で世界を救うことは出来ないんでしょうか?」



どうやら勇二はそのことが気になっていたようだ。

もし、もし女神の言う通りに他に世界が存在するというのなら、その役割は自分たちでなくてもいいはずだ。

そもそもの話、転生がどうのこうの言っている時点で目の前の存在が命というのを操れる存在であることは想像に難しくない。

なのに目の前の存在はなぜそれを実行しないのか?

いや、たとえ実行できない理由があったとしよう。

なぜ自分たちが選ばれたのか?

それが勇二の疑問だった。


「そうですね。まずはそこから話さなければなりませんね……」


そう言って目を伏せて、小さく嘆息する女神。

朝日達はは女神の言うことを一字一句聞き逃さぬよう集中する。


「まず、神というのは基本的に下界に干渉することは出来ないんです」

「基本的に、ってことは例外があるってことだよね?」

「そうですね。例を挙げるとしても『世界が滅亡の危機に陥った時』くらいしかありませんけどね」

「だったら尚更、この状況はアンタの手でどうにかできるんじゃ……」

「残念ながら、それは不可能です」

「なんで?」


女神はそんな朝日の言葉をきっぱりと否定した。

そして、次に女神の口から出てきた言葉は驚きの事実だった。


「その世界に一切の干渉ができなくなってしまったからです」


本日何度目かの衝撃の発言だ。

女神の爆弾発言に朝日達はただただ呆けた顔をすることしかできなかった。


「なんでそんなことになったんです?」

「わかりません。何せ一切の干渉ができないものですから、下界の様子を見ることもできませんし、神官たちに神言を授けることもできないのです。はっきり言って数百年前から現状は全くつかめていない状態なのです」

「なにか、なにか策はなかったのか?」

「ええ、ありました」

「どんな?」

「過去に何度か世界に無理やり『門』を開いて、使者としてアナタ方のような転生する資格を持つ方をその世界に送り込んできました」

「結果は……?」

「………ただの一人として輪廻の輪に戻った者はおらず、ただの一度としてその世界の姿を覗き見ることができなかったのです」

「そう、か」


「それにしても、一応は神という位についているアンタがどうしてその世界の状況を知ることができないんだ?神ってのは万能じゃなかったのか?」

「いえ。神というのは基本的に神でも万能の力を持ちます。相手がヒトであるならば」


思わせぶりな女神の発言に朝日は一つの結論に思い至った。


「まさか……」

「えぇ…おそらく、そのまさかです」


意味ありげな会話を繰り広げる二人。


「ねぇ朝日、一体何が分かったの?僕達にもわかるように説明して」


すると、すっかり会話に追いつけなくなった勇二が朝日にかみついた。

勇二の後ろを見れば未希もその言葉に同乗するように頷きを繰り返していた。


「ああ。なに、簡単なことだよ……」



「オレ達が転生する世界には、この女神と同等か、それ以上の力を持つ存在がいるってことだ」



「なんだって!?」

「それ、私たちだけでなんとかなるの!?」

「気持ちもわからんではないが落ち着け。これはあくまで神が他にも存在すると仮定した上の話だ。……で、そこんとこどうなんだ、女神」


半ば悲鳴のような声を上げて驚く二人宥めつつ朝日は静かに女神に視線を送る。


「ええ、まずはその質問から答えましょう。アナタの推論通り、神というのは私の他にも複数存在します」


女神の推測通りの言葉を聞いた朝日は小さく「やはりな…」と納得したような呟きを漏らした。


「少々話の規模が大きくなりますが、私のような神は世界に幾人も存在しています。そして、アナタ方の憶測通り、あの世界には私と同等以上の力を持つ神が潜んでいます」」

「そ、そんなのと私たちは戦うってことだよね…?勝ち目なんてあるのかな……?」

「まだ戦うと決まったわけじゃないよ。まあ、それ以外の結末が見えないのも事実だけどね」

「まあ、他人もとい他神の管理する世界に居座って、尚且つその管理者から世界を丸ごとぶん盗るヤツだ。そうならない方がおかしいわな」

「勝てる、かなぁ」

自信なさげに小さく呟く未希。


「そうですね。普通に戦えば勝ち目はないかもしれません」


すると、未希の弱気な発言を聞いた女神目を伏せて小さく呟いた。


「ですがアナタ方には『器』があります」

「『器』?」

「ええ。私は存在する神の中でもそれなりに力の強い方です。そして、神というのは下界に住む人間にそれぞれ『ギフト』と呼ばれる特別な力を授けることができるのです」

「「??」」

「……要約すると、『ギフト』ってのはアンタからもらえるオレTUEEEEEEEEできるチート。『器』ってのはその『ギフト』を受け取ることのできる権利みたいなもんだな」

「え、ええ。流石にそこまでチカラの大きいものを授けることは出来ませんが、大体そんな感じかと」


既に会話に置いてけぼりになっている勇二と未希のため、大分かみ砕いた表現で説明してやる。

対する女神は朝日のハッちゃけた解釈に困った顔をしながら頷いた。


「で、その『ギフト』っていうのはどんなチカラなんだ?」

「そうですね。人によって様々、とだけ」

「うん?人によって内容が違うのか?」

「ええ。基本的にはそうなります。……『ギフト』というのは、与えられた人の本質、願いや生き様などによって様々な力に変化するのです」

「へぇ?過去に送った奴らはどんな……って、そうか。分からないんだったな」

「参考にならず、申し訳ありません」

「いや、いい」


朝日の言葉を皮切りに再び静まり返る白い空間。

そんな気まずい空気の中、女神は話を切り出すため、三度小さく咳払いをした。


「さて、ここまで話を聞いていただいた訳ですが、私が最初にアナタ達にお願いした事を憶えてますでしょうか?」

「ああ、覚えてるよ」


確かこの女神は…


「『世界を救ってほしい』だったな?」

「ええ。その通りです」


女神は懇願するような眼差しで三人に向け―――――


「アナタ方には長々と身の上話を聞いていただきました。どうか、私の願いを聞き入れてはいただけないでしょうか」


――――――深く深く頭を下げた。



to be continued...

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