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異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー  作者: 心労の神狼
第0章 人生の終わりと物語の始まり始まり
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0-3 女神のお話し

黒腕最新話更新です!

「初めまして、私の『勇者』。私で宜しければ説明いたしましょう。この『女神 リクシル』が」


...『女神』、確かに目の前の女はそう言った。

普通ならば頭の出来を疑うところだが、いかせん今は状況が違う。

あの時、確実に死んだ自分たちが無傷で、ここにこうして存在しているのだ。何があっても不思議ではない。

それに、目の前の『自称女神』のおかげで、朝日が先程立てた『ここが死後の世界である』という仮説が現実味を帯びてきた。


「あ、あれ?心なしか反応が薄いですね。私何かやらかしました…?」


不安そうな顔でオロオロし始める『自称女神』。

普通ではみっともない、だとかカッコ悪いなどのマイナス面の感情が湧き起こるそれであるが、朝日はなぜかこの女にその感情が湧かなかった。

むしろそのことに疑問すら感じなかった。

どうやら、この女には『女神』という存在を納得させる何かがあるようだ。

現実的にあり得ない、美しくも幻想的な緑色の髪と金色の瞳、均一の取れた美しい肢体、すべてを受け入れるといわんばかりの慈愛のこもった微笑み。

本能なのかどうなのか判断はつかない。

だが、三人はそれぞれ、この女が女神であるという確信をもった。

ひとしきりの観察を終え、朝日は伏せていた視線を女神に向ける。


「説明する、そう言ったな?」


静かに、確認するように問う朝日。


「はい、確かにそういいました。質問があるなら、伺いましょう」


それを肯定し、口元に浮かんだ笑みを深める女神リクシル。

女神リクシルが微笑みを浮かべているのに対し、朝日の表情は険しくその一字一句を聞き逃さんとばかりに目を細めている。


「じゃあ早速質問だ。ここはどこだ」


朝日は今、一番の疑問に思っていることを口にした。

これは勇二と未希にとっても最優先で確認したいことだったので二人は何も言わない。


「ここはどこなのか、ですか?…そうですね。アナタ方に分かり安い言葉で言うなれば、ここは『死後の世界』ということになります」


ある意味想定通りな女神の言葉に、勇二と未希は思わず言葉を失う。

動揺し、気落ちしたように俯く二人とは対照的に朝日に動揺した様子はない。


「まあ。そうだろうな」


むしろ、自身の立てた仮説が正しかったことに誇らしげに思っているように見える。


「予想通り、ですか?まぁ、いいでしょう。それでですね?実はアナタ達は若くして沢山の善行を積んだため、輪廻の輪に乗らずに転生する権利が与えられているのです」

「輪廻の輪に乗らずに、転生?」

「ええ。本来、ヒトが転生する場合、魂は必ず輪廻の輪に送られ、そこで魂に記録された情報を一斉消去してから転生、という運びになるのです」

「中古のパソコンを買う時と同じ感覚か」

「え、ええ。多分、その捉え方で問題ないと思います。あ、話を続けますね?……ですが、貴方達は特例としてその輪廻の輪に乗ることなく、つまりは前世の記憶を保持したまま来世に渡る権利があるのです」

「ふーん。なるほど、ね」


女神の口から語られた言葉に感心したように頷く朝日。

どうやら、話を聞く限り自分はとんでもない奇跡体験をしているようだ、と朝日は他人事のように感心していた。

「それにしても」と女神は続ける。

女神は一瞬だけ目を細め、堂々と腕を組み睨み付けるようにこちらを見ている朝日に視線を向ける。


「アナタは随分と落ち着いていますね」


そう言って後ろの二人に視線を向ける女神。

朝日の後ろには真っ白な床にへたり込み、涙を流す二人がいた。


「うっ………うっ……」

「おかあさっ……おとおさっ……」


後ろを振り返らずとも、背後から聞こえる嗚咽を、声を聞けば分かる。

先ほどまで、当たり前のように日常を過ごしていたのに気が付けば命を落としていた。

ショックを受けて当然だ。

おそらく、二人の胸中にはとてつもなく複雑な感情が渦巻いていることだろう。

もちろん、朝日とて別に何とも思ってないわけではない。

ショックだって受けているし、心残りだってある。

ただ、これがどうしようもない現実であることを理解しているから、抗うことの出来ない理不尽であると知っているから、こうして落ち着いていられるのだ。

それに...

彼が抗いようのない理不尽を体験するのはこれが初めてではない。


「まぁな。一応死ぬのはこれで二回目らしいからな」


そう言って皮肉気に嗤う朝日に女神は怪訝そうな表情を浮かべる。


「二回目…?まさかあなたは転生者なのですか?」

「いいや、違う。まあ、そんなことはどうでもいい。それで、改めて聞くが、何用だ?」

「いえ、ですから貴方達には輪廻の輪に「さっさと話してくれないか。『オレ達がここにいる本当の理由』を」」


女神の言葉に被せるように放たれたその言葉は、大した声量で無かったにも拘らずその空間一帯を静まり返らせた。

先程までの話を聞く限り、この女神は消して嘘は言っていない。

いや、嘘を言っていないからこそ違和感を感じた。

いうなれば、『うまい話には裏がある』というやつだ。

これはあくまで朝日の直観に基づく見解だが、目の前の女神からは得体のしれない思惑が見え隠れしている。

何か重要なことを隠している。そして、その隠し事の中身について焦りを覚えているように見える。

一体どんな思惑を隠しているのかはわからない、わからないが、どうやら朝日の読みは見事に的中したようだ。

実際、ほんの少しカマをかけただけで女神は完全に固まっている。

どうやら先の言葉で見事に動揺してくれているようだ。

朝日はその様子を愉快そうに眺める。

先ほどから蚊帳の外となっていた二人も少し落ち着いたのか、泣きはらした真っ赤な目で朝日の視線を追うように女神を見つめている。

やがて...


「…参考までに聞きますがなぜ私が本当の要件を話していないと?」


視線に耐え切れなくなったのか、女神は若干笑顔を引き攣らせつつ恨めしそうに朝日を見つめる。


「簡単なことだ。あんたが本当に女神なら、ただちょっと良いことをしただけの、ましてや十数年しか生きていないようなガキに会うわけねぇだろ?」

「それに、噓をつきなれてないのがバレバレだったしな」と女神の視線を気にすることなく人の悪い笑みを浮かべる朝日。


それよりも早く本題に入れ、と朝日は視線で訴えかける。


「はぁ、分かりました。すべてお話いたしましょう、なぜアナタ達がここにいるのか」


観念したように話し出す女神。

簡潔に言いますね、と前置きを入れ話し始める。



「えーっ、実は貴方達には私の管理する世界に行き、その世界を救ってほしいのです」



「…は?」



そんな女神の予想外の言葉に、朝日の間抜けな声が白い空間の中を虚しくこだました。


to be continued...

2016/11/30 一部箇所を改稿しました。

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