重なり
彼と出会って一週間
学校で会うことはなかった。
そんなある日のことだった
私と唯は休み時間、保健室に行っていた。その日は人が少なかったので先生と唯と3人で会話をしていた
「先生ー!まじ最悪!足!」
聞き覚えのある男の声。だが、そんなことはよくあったのでその男の方を何故か見ないようにした。
「あれ?」
うわー、気づかれたかな。
「あれれー川口ミツ。なにしてんのー?」
案の定。私は気づかれてた。唯との話に夢中になってるふりをして聞かないようにしていた彼の声。
その軽くかすんだ声が耳に響く
「なんだよお前。無視が得意だな」
「別にそーゆーいみじゃないけど!」とつい向きになってしまった。
彼の方を見ると口角をあげてこちらの心を読んだかのように
「ごめんねミツ」
と優しく言われた。
私は彼に軽く睨みをかけて唯に「行こう」と腕を引っ張った。唯は「う、うん」と言って保健室を後にした。
次の授業が終わり「ミツ!」と唯がこちらに駆け寄った。
「さっきはどうしたのさ!」
心配してくれる唯にはなんでも話してしまう。今思えば大げさに言ったのかもしれない。
「そんなことでおこるなんて、やっぱりミツの怒るツボが今だにわからない!」なんて笑い事だった
「まあまあ!そんなこと気にしないで保健室いこーよ!」
まだ名前も知らない彼に腹を立てる自分にも少しバカバカしい思いが芽生え、唯と保健室に向かった
そこにいたのはあいつだった「さっき言ってた人じゃない?」と小声で言う唯に私は口に人差し指をあてて「しーっ」と言った
「ねーねー川口ミツーー。俺の名前知ってる?」
話しかけられるとは思ってなくて「えー?」と思わず声に出てしまった
彼はふっと笑みをこぼすと
「俺ね、山口 雄大。覚えといてね先輩」
山口雄大。この名前が頭から離れなかった。
そして、私と同じ思いをした人が
近くにいるなんて思いもしなかった