あらすじ:第一章『絶望の迷宮』※ネタバレ有
廃人達は己の目を疑った。愛して止まないゲームの世界が目の前に広がっていたからだ。そして、自分の体はゲーム内のキャラクター。人生を削って得た伝説の装備品や、超人的なスキルの数々。同時に、歩けば疲労し、腹が減り、喉は渇き、睡眠を求め、傷つけば血が流れる、生の肉体、現実となったゲームは厳しい世界であった。
唯一の救いは、死が終わりではない事だった。例え死んでもそこで終わりではないのだ。
迷宮最深部、水も食料もない、脱出するまでには歩き続けて五日間以上、身動きが取れなくなる前に『絶望の迷宮』から脱出をする事を決意する。
そんな中、死霊使いと呼ばれる万能職は何故かスキルが使えず肩身の狭い思いをしていた。
道中、モンスターを食べては腹を壊し、渇きを抑える為に様々な手段を取り、すきっ腹を抱えた彼らの前に現れたのは、行動を共にする事を選ばなかった女、『シルキー』であった。
彼女は、同じパーティのメンバーがPKの集団に殺された、と泣きながら訴える。
背後から忍び寄るPK集団という新たな脅威が判明し、緊張を深める一行。
道中の襲撃で、致命傷を負う廃人魔法使い、『ナイトウ』。何故かスキルを使えなかった死霊使いの少女、『チャカ』は必死に彼を癒そうと祈る。祈りは通じ、おぞましい奇跡が起こった。
死霊使いのスキルは、HPを削って使うという設定だった。それが、この世界では自分の肉体を文字通り削って使う設定となっていたのだ。
ショックで一時的な記憶の障害を負ったチャカ。
だが、一個人の事情など関係なく脱出劇は続く。
PK達の動機は不明。だが、確実に彼らは襲ってくる。ならば、迎え撃つしかない。
迷宮入り口の『大穴』で後顧の憂いを絶つべく、廃人ギルドのマスター『ベルウッド』はほぼ同数でPK集団を返り討ちにする事を決意する。
そして、PVPが始まった。徹底的に犠牲者を増やそうとするPK達の魔手に、脱出途中のチャカは巻き込まれ、崖から落ちる。命懸けでそれを救うナイトウ。
大穴の底で繰り広げられたのは、栄光に満ち溢れた戦いではなく、血と泥に塗れた単なる殺し合いであった。しかし、迷宮から脱出できた『英雄』達は、それでも希望を失わない。街を目指し、出発する。
ところがその一方、迷宮最深部では倒したはずの『邪神』が復活した。
邪神に宿る魂は、八木太一のものであった。