発見者 :約2500文字
夜、とある国の田舎。その一軒家にて――。
「おー! よく来たねえ。遠いところから、いやあ、ようこそようこそ。こっちが私のワイフで、それから二人の息子だ。大きいほうがティム。ちっこいのがピーターだ」
「いらっしゃい。うふふ」
「どうもー」
「こんばんは!」
――こんばんは。飛行機が遅れてしまい、夜分にお邪魔することになり申し訳ありません……。
「ははは、いいんだ、いいんだ。こんなド田舎までよく来てくれた。それに、あれも夜に起きたことだからな。思い出すには、むしろちょうどいい」
――ありがとうございます。私たちは日本のテレビ局の……。
「ああ、そういう堅苦しい挨拶は抜きにしよう。ほら、座って座って。酒はいける口かい?」
――いえ、取材中ですので……。あの、さっそくですが……。
「まあまあ、少しぐらい酒が入っていたほうが、頭も口もよく回るもんだ。おっ、そうだ。ワイフが作ったスープがあるんだ。おい、持ってきてくれ」
「はいはい、どうぞ。マグカップの底が熱いから気をつけてね。はい、スプーンも」
――ありがとうございます。いただきます。……あっ、おいしいですね。
「ふふっ、そう言ってもらえてよかったわ」
「ほらほら、もう下がれ。さあ、なんでも聞いてくれ。はははは!」
――よろしくお願いします。では……あなたがUFOを目撃したという話は、本当なのでしょうか?
「ああ……あれは、今夜みたいに風ひとつない静かな夜だった……。息子たちとここでテレビで野球を見ていたんだ。オーデンがヒットを打った直後、ピーターが壁のスイッチを押して部屋の電気を一瞬消したんだ。いたずらっ子でな。まったく、馬鹿野郎が。おれは怒鳴りつけようとして息を吸った。その瞬間だった。窓の外がピカッと光ったんだ。しかも一度きりじゃない。三回だ。なあ、ティム。三回だったよな?」
「ああ」
「僕も見たよ!」
「妙だと思ってな。おれはティムを連れて外に出た。するとだ……西の空に、光り輝く円盤が浮かんでいたんだ! そいつは音もなく、家の裏手の山のほうへゆっくり降りていった。おれはすぐに家に戻って、猟銃を二丁手に取った。それからワイフとピーターに、絶対に外へ出るなと言い、ティムに一丁渡して、二人で山へ向かった」
――そこで、あなた方は実際にご覧になったわけですね。UFOを……。
「ああ、はっきりとな。光は消えていたが、デカかった。おれのジープは見たか? あいつも相当デカいが、もっとデカかった。なあ?」
「まあね。トレーラーハウス二つ分くらいはあったかな」
――着陸していたんですね。それで、どうされたんですか?
「ああ。おれとティムは茂みに隠れて、じっと様子をうかがった。すると突然、船体の一部が扉のように開いたんだ。なあ、いきなりだったよな!」
「ああ」
――なるほど……それから、どうなりましたか?
「ああ……そこから出てきたんだよ」
――おお、それはまさか……。
「宇宙人だ。ひょこひょこと三匹、中から現れたんだ。細っこくて、形は人間によく似ていたな」
――なるほど……。それで、彼らは何を?
「ああ、おれのほうを見て右手を上げたよ。どうやら、もう見つかっていたらしい。だからな、おれは狙いを定めて、引き金を引いた」
――えっ。
「そしたらな……ははは! 命中だ! 右手の手首から、きれいに吹っ飛ばしてやったよ!」
――いや、え?
「そいつ、変な声を上げて膝をついてな。他の二匹が慌てて駆け寄ったんだ。そしたら、ははは、ティムのやつが、怪我してるそいつの顔に一発お見舞いしてやったんだ。なあ!」
「ふっ、まあね」
――え、ちょ、え?
「一匹目がぐらっと倒れると、残りの二匹が甲高い声で絶叫してな。おれたちが近づいたら、円盤に逃げ込もうとしたんだ。だから、後ろからケツめがけてぶっ放してやったよ。二匹目は地面でのたうち回って、三匹目は膝をついて泣き叫んでたな」
――いや、あの……宇宙人を銃で撃ったんですか?
「ああ、そうだ。仕留めてやったよ。はははは!」
――それはその、すごいですね……。ちなみに、証拠とかは……ありませんよね?
「ん? ほら、そこの壁を見てみな。鹿の首の剥製の隣だ」
――壁の……うおっ!? あ、あれ、宇宙人の!? いや、というか剥製にしたんですか!? しかも二体も!?
「ああ。まったく、ティムときたら、二匹目も自分で仕留めようとしやがって。慌てて、おれがとどめを刺してやったんだよ」
――いや、どっちが倒したかはどうでもいいですけど……。あれ、本物なんですか……?
「ああ、本物だ。あんたらが来てくれてよかったよ。まったく、地元のテレビ局ときたら、まるで信じやがらねえんだ。頭にきたんで、もう二度と取材なんか受けてやんねえよ」
――いや、正直我々も『宇宙船は見たが、すぐに飛び去った』ってパターンだと思っていました……。
「ははは! 飛べるわけねえだろ。ガソリンぶっかけて火をつけてやったからな。もう跡形も残ってねえよ」
「山火事ヤバかったよね」
――じ、じゃあ、証拠はあの剥製だけなんですか……? ははは……。
「ねえねえ!」
――ん? えっ! ちょ、それ宇宙人!?
「僕のペット! 名前はバイデン! ほら、ちゃんと跪けよ!」
「ああ、三匹目は生け捕りにしたんだ。ぎゃーぎゃーうるさかったから、銃の柄で頭を殴ったら気絶してな」
――えええ……というか、その宇宙人、子供じゃないですか……? もしかして、家族だったんじゃ……。
「さあな。宇宙人のことなんか知らねえよ。でも、意外とうまかったよな。はははは!」
「血が緑色なんだよー! ほら、吐けよ!」
――や、やめなさい……うまかった? まさか、食べたんですか……?
「ああ、食ったよ。干し肉にして保存してあるんだ。ほら、そのスープに入ってただろ」
――おええっ……!
「おいおい、大丈夫か? 飛行機酔いだな。洗面所で顔でも洗ってくるといい。ティム、お前が案内してやれ」
「……ああ。こっちだよ。地下にあるんだ」
――あ、はい……。すみません……。でも、我々はそろそろ……。
「いいから、行った行った。……さてと、それはそうと君、いいカメラ使ってるな。操作はどうするんだ? ん? ああ、今の銃声か。気にするな。近所のやつが猪でも撃ったんだろ。え? ああ、ははは、確かに近所なんてねえな。ほらほら、いいから座って、座って。仕留めた獲物の話はまだまだあるんだ……」




