第七話 寒い朝
寒い日が続きますがお変わりありませんか?
ネズミ「やあ、ウサギくん」
ウサギ「やあ、ネズミくん。今日は何の話?」
ネズミ「ん~、今日は何に怒ったらいいか分からないんだ」
ウサギ「どうしたんだい。でもくれぐれも言っておくけど僕に当たらないでおくれよ」
ネズミ「そのつもりだけど、話の展開によっては荒れるかもしれないからね」
ウサギ「・・・・」
ネズミ「今朝、川の水で手を洗ったんだ。ものすごく冷たかった」
ウサギ「特に今朝は寒かったよね」
ネズミ「この冬一番の寒さだったよ」
ウサギ「それでどうしたの?」
ネズミ「聞いてくれよ」
ウサギ「聞いてるよ」
ネズミ「そうだね。聞いてくれているんだよね」
ウサギ「だからそれでどうしたんだい?」
ネズミ「手に着いたその冷たい水を払おうと思って、手を思いっきり振ったんだ」
ウサギ「それで?」
ネズミ「その時、傍にあった石に指先を思いっきりぶつけたんだ」
ウサギ「そりゃ痛かったね」
ネズミ「痛いなんてもんじゃなかった」
ウサギ「分かるよ。寒い時は特に痛く感じるもんね」
ネズミ「その石に腹が立って、今度はその石を思いっきり蹴飛ばしたんだ」
ウサギ「そんなことしたの。別にその石が悪いわけじゃないのに」
ネズミ「ああ、そうさ。分かってるよ、そんなこと。でも悔しかったんだから」
ウサギ「それでもっと痛い思いをした!?」
ネズミ「そうだよ。だから誰に怒ったらいいか分からないんだよ」
ウサギ「辛いね。その気持ち、分かるよ」
ネズミ「嘘だろ。君はずっと檻の中にいて過保護なんだから。 こんな経験、したことないだろう」
ウサギ「そんなことはないさ。僕だって痛い思いをしたことはあるよ」
ネズミ「いい加減なこと言うなよ。だんだん腹が立ってきた。
もう帰る」
ウサギ「ああ、八つ当たりされちゃった。やっぱり僕に文句を言いたかったのかな。
そもそも自分の不注意が招いた結果だと思うんだけど、そんなこと言ったらもっと怒っただろうな。
言わなくて良かった」
どうしていいか分からない怒りとか不満とかを受け止めてくれる存在って、ありがたいですよね。