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第53話 道草(みちくさ)

少し春めいて来ましたね。

あちこちに可愛らしい花が咲き始めています。

そんな花に一時心を奪われることって、ありますよね!

ネズミ「やぁ、ウサギくん」


ウサギ「やぁ、ネズミくん。

 今日はここに来る時間がいつもより一寸遅くない?」


ネズミ「うん、一寸ね」


ウサギ「珍しいじゃん」


ネズミ「それがさ、ここに来る途中で変なもの見つけてさ」


ウサギ「変なもの?」


ネズミ「そう、変なもの」


ウサギ「それって何?」


ネズミ「それがよく分からないんだよ」


ウサギ「へえ~!

 ネズミくんにも分からないものがあるんだ!?」


ネズミ「馬鹿言ってんじゃないよ。

 世の中にはさ、俺が知らないものの方が圧倒的に多いんだよ」


ウサギ「ネズミくん、頭、大丈夫?」


ネズミ「大丈夫だけど、何でさ?」


ウサギ「だって今日のネズミくんは凄く謙虚けんきょだからさ。

 どこか具合でも悪いのかと思っちゃったよ」


ネズミ「最近ウサギくんは俺のこといじるようになったね~」


ウサギ「いつも僕がやられているからさ、たまにはお返ししないとね」


ネズミ「そんなお返しはいらないし、そもそも俺はウサギくんのことをいじったりしたことなんかないからね!」


ウサギ「・・・・(これだ!)」


ネズミ「それにしてもあれは何だったんだろうな~?」


ウサギ「どんなものだったの?」


ネズミ「どら焼きのような形をしてたんだけど、どら焼きじゃない」


ウサギ「うんうん。それで!」


ネズミ「一寸突っついてみたんだけど、ぷにょぷにょしてて・・」


ウサギ「生き物なの?」


ネズミ「全く動かないから生き物じゃないよ」


ウサギ「匂いは?」


ネズミ「それがさ、何だか甘いようないい匂いがしたんだよ」


ウサギ「食べ物?」


ネズミ「いくら食いしん坊の俺でも流石に食ってみる気にはなれないようなものだったよ」


ウサギ「それって、何だったんだろうね?」


ネズミ「世の中には不思議なものがあるよね」


ウサギ「でも、ネズミくんみたいにあちこち出歩いているといろいろな面白いものに出会えるんだね」


ネズミ「そうね、気がそそられるようなものを見つけると黙って通り過ぎるなんて、できないよね」


ウサギ「そういうの、道草って言うんでしょ」


ネズミ「ほぉ、よく知っているじゃん」


ウサギ「この前なんだけど、太郎くんが学校帰りに道草を食ってお家に帰るのが遅くなってしまって、凄く怒られたんだって」


ネズミ「へ~ そんなことがあったんだ。  

 可哀そうに!」


ウサギ「一寸太郎くん、しょげてたよ!」


ネズミ「子供の頃の道草は、いろいろなものに対する興味心の表れだから、それを摘むようなことしちゃいけないと思うんだけどね」


ウサギ「いいこと言うじゃん」


ネズミ「俺を誰だと思っているんだい」


ウサギ「おっ! またそのセリフが出たね」


ネズミ「だけどさ、俺がよく出入りしているお宅でこんなことがあったな~」


ウサギ「どんなこと?」


ネズミ「そこの家の親父おやじさんが買い物途中でパチンコ屋で道草食ってさ、それが奥さんにばれてこっぴどく叱られているのを見ちゃったんだ」


ウサギ「あらまぁ!」


ネズミ「親父さん、そりゃもう可哀そうなほどだったよ」


ウサギ「たまには息抜きも必要なのにね」


ネズミ「それがさ、たまにじゃなくて、しょっちゅうなんだってさ」


ウサギ「なるほどね」


ネズミ「俺がここに寄るのも道草みたいなもんだから、怒られないうちにそろそろ帰るとするか。

 じゃあね、バイバイ!」


ウサギ「ひとりもんのネズミくんが、誰に怒られるんだ!?

 だけど、道草って何か楽しそうで、いいと思うけどな~」

花粉が鎮まったら、出かけるぞ〜!

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