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盤上世界の英雄譚  作者: ウツロうつつ
第1章~ギフト~
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第8話 盾使いとペネトス

「シュン!ペネトスの能力は判明しましたか?」


 メリアがシュンに顔を近づけて食い気味に質問をする。シュンがペネトスに選ばれてから数日、メリアは事があろうとなかろうとシュンにペネトスについての質問を投げかけていた。


 シュンはそんなメリアに若干呆れつつ、毎度のごとく同じように返答する。


「うんにゃ、全然。というかこいつあの日以来俺に何も伝えてくれないんだよな」


 シュンがそう返答するとメリアは「そうですか……」と言ってガクリと肩を落とす。シュンの言う通りシュンがペネトスを手に取ってから数日、シュンがペネトスに質問を投げかけたりブンブンと乱暴に振り回したりしてもペネトスからの返答はなかった。


「つーかメリアはこいつの何がそんなに気になるのさ?」


 シュンからの質問にメリアは何やら言い難そうな顔をする。


「それは――なんでもありませんけど――けど、気になるものは気になるのです」


 そう言ってポカポカとシュンのことを叩くメリア。そこだけを切り抜いてみれば青春真っ盛りの男女のやり取りのように見える。


「ちょ、メリア、痛い、痛いってば」


 そんな微笑ましい光景を見つめる人物が2人あった。


「いや~青春してますね~隊長」


 そう言ってニヤニヤとしているのはモリア隊の副隊長レオルだ。


「そんなもの私が知るか」


 そう興味なさげに吐き捨てたのはモリアだった。


「そんなことよりも灰魔の件だ。もうそろそろ狩りに出ないと一般市民に被害が出る。あの見習いは使い物になってきたのか?」


「基礎体力は十分にあるんですけど実戦経験がほぼゼロなのであと一か月は必要です。槍に選ばれただけあって槍の才能は有るんですけどね。こればっかりは時間をかけなければなりません」


「長い、あと2週間だ。2週間で少なくとも実戦投入できるようにしろ」


「そんな無茶な――」


「無茶などでは無い、そうしなければならないのだ。わかったな」


 言うだけ言ってモリアはその場を後にする。残されたレオルは盛大なため息を吐いてシュンたちの下に歩みを進め、シュンはそんなレオルに気が付き声をかける。


「あれ?副隊長今日の訓練は終わったんすよね」


「いや、シュンそれどころではなくなってね。隊長命令で後2週間で君を使い物に出来るようにしなければならなくなった。と、いうわけで訓練続行だ」


 レオルが苦笑いを浮かべながらそう言うと、シュンは辟易といった様子で


「え~まじっすか~あの隊長一体何を考えてるんすか?」


と文句を口にする。


「それは隊長のみぞ知るってやつさ、さ、シュン訓練訓練」


 シュンは文句を言いつつも上官命令には逆らえないと、渋々重たい腰を上げる。


「シュン、ファイトです」


 メリアはそんなシュンに両手をギュッと握りしめて声援を送る。シュンはそんなメリアに「あいよ」と軽く返事をしてレオルの方に向き直る。


「それで副隊長一体何の訓練をするんです?」


「そうだな……残り2週間しかないしシュンを手っ取り早く強くするには魔法が一番なんだけど……」


「それ、この間メリアと練習してみましたけど、俺には魔法の才能が全くないらしいっす」


 異世界転生と来れば魔法だ。幸いこの世界にも魔法は存在する。だからこそシュンは自身も魔法を覚えようとつい先日にメリアに師事したのだが、結果としてシュンには魔力そのものがなく、魔法が使えないことが判明していた。その時のシュンの落ち込みときたら大層なものであったのだが、メリアの「ギフトもちの方が少ないですよ」というフォローを受けてなんとかモチベーションを持ち直していた。


「ありゃ、もう試してたのか。となると神賜武装(しんしぶそう)の特殊能力を開花させることくらいしかないね」


「それってそう簡単に出来ることなんすか?」


「う~ん、神賜武装の能力開花にはこれといって確かな方法がないんだよね。突然使えるようになったって人いれば、最初から使えたって人もいるし……」


「因みに副隊長は?」


「私は後者の方だね。武器に選ばれた段階で使えるようになっていた」


「うわ、いいなぁ~因みに能力は?」


「それは秘密さ、というかシュンもペネトスの能力が判明しても誰彼かまわず教えるのはよした方が良いよ」


「それはまたなんで?」


「自身の手の内をひけらかすのは愚者のすること、正体不明の手札は多く持っている方がハッタリも効くだろ」


 そう言ってウインクをするレオル。シュンは男のウインクなど見ても損した気持ちになるだけだな、と思いつつレオルの言葉を反芻(はんすう)する。確かにレオルの言うように手札は多いにこしたことはない。ここは素直にレオルの助言に従うことを決める。


「了解っす、副隊長の助言に従います。けど、だったらなおのことペネトスの能力開花?を急いだ方が良いっすね」


「そうだね。というわけでシュン、ペネトスを構えるんだ」


 言ってレオルはどこからか持ってきていた木剣を片手で構える。表情は真剣そのものだ。


「副隊長まさか……」


 シュンは嫌な予感がした。


「これから2週間シュンには私と実戦形式で模擬戦をしてもらう。当然ペネトスの能力が開花するまでね」


 それから2週間、シュンは地獄のような模擬戦の日々を送るのであった。



 2週間後、シュンはモリア隊の面々と共に王都の門の前で整列していた。装備は全員が全員鎧を装備している。


 因みにではあるがこの2週間の訓練をもってしてもシュンはペネトスの能力開花には至っていなかった。地獄の訓練の日々はシュンの槍の実力を飛躍的に向上させ、実戦投入しても問題ないレベルにまで達していた。


「ね~隊長~これからどこに行くんすか~」


 シュンが隊長であるモリアに向かって馴れ馴れしく質問する。しかし、問われたモリアはシュンの質問を無視して他の隊員と何やら話している。聞こえなかったのか?シュンはそう思い大きく息を吸って、


「モリア隊長、これからどこへ行くんですか!!」


街中に響き渡るほどの大声で質問する。するとモリアはワナワナと拳を握りこんでシュンを一喝


五月蠅(うるさ)い!!」


 しかしシュンはその程度ではへこたれない。


「これからどこへ行くんですかって質問しただけじゃないですか」


「そんなバカでかい声で質問する奴があるか馬鹿者!それにこれからの予定については伝達してあるはずだ」


「でも俺そんなの聞いてませんよ」


「レオル!これはどういうことだ!」


 言われたレオルは「あ~」と何やら言い訳を探している風だ。


「シュンは別メニューで訓練していましたからね。どうやら伝達ミスで今日の予定が伝わっていなかったようです」

 

 レオルの言い訳にモリアは瞑目して頭を掻く。どうやら怒りを通り越して呆れてきたようだ。


「全くどいつもこいつも騎士としての自覚が足りないのではないか!」


「申し開きようもございません」


 素直に謝るレオルを他所に、シュンはしつこく質問する。


「そんなことよりも隊長!今日の予定!!」


「あ~もう、狩りだ」


「狩りって何の?」


「騎士の狩りと言えば決まっているだろう。灰魔狩りだ」





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