プロローグ~諦めない少年~
――このままじゃヤバい
自身の横に倒れ伏す女騎士を横目に少年は思った。彼が手にするのはただ一本の槍、しかしその槍の一撃をもってしても目の前にいる異形には傷一つつけることは出来ないだろう。
――もうギフトは使い切っちまったし、これ以上奴の攻撃を受けることは出来ない
不幸中の幸いか、横で倒れ伏している女騎士のおかげで自身は傷一つない。
――逃げるのならば今しかない
少年はそう思うが体がそれを許さない。いや、未だ見習いではあるが自身も騎士だという矜持が逃げるという選択肢を少年に選ばせなかった。
――どうにかしてこいつを斃さなければ
少年は意を決するが、目の前の異形に対抗する手段なぞとうに尽き果てた。ならばどうする。少年は考え、考え、考え抜くがその答えは決まって諦めの二文字に帰結する。
――もうダメなのか?この世界でも諦めろというのか?
少年の中で世の理不尽さに対する怒りがこみあげて来る。
まえの世界でもそうだった。病気という理不尽が自身の明るさを、自由を、生すら奪った。この盤上世界でも異形という理不尽が自身の生を奪おうとやってきた。
――ちくしょう、ちくしょう、ちくしょうちくしょうちくしょう畜生!!
悔しさが少年の視界を涙で濡らす。少年は求める。この理不尽を覆すほどの力を、この異形を斃すだけの力を。
しかし、世の中はそう甘くはない。突然願ったところで力など与えてはもらえない。
そう、突然願ったところでは。その時であった。少年の何かの記憶が蘇った。
「なんだ……あるんじゃねぇか」
少年は涙を拭い目の前の異形を強く睨みながら不敵に笑う。まだあった。この局面を打破する力が。
少年は自身の右腕に力を込め、槍の柄を握りしめて啖呵を切った。
「化け物野郎、この盤野盾様を舐めんじゃねぇぞ!!」
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