記憶のカケラ
秋山蓮は、いつもと変わらない朝を迎えたはずだった。だが、目覚めた瞬間に感じた異様な頭痛とともに、全てが変わってしまった。ベッドから起き上がり、鏡に映る自分の顔を見た時、彼は自分が誰なのかすら思い出せなかった。
混乱の中で蓮は部屋を見回し、手がかりを探し始めた。古びたデスクの上に置かれた手帳が目に入った。表紙には「秋山蓮」と書かれており、それが自分の名前であることに気づく。手帳を開くと、そこには過去の事件や依頼の詳細がびっしりと書かれていた。
ページをめくるたびに、蓮の胸にわずかながらも懐かしさがこみ上げてくる。彼は探偵だった。それだけは確かだ。しかし、なぜ記憶を失ったのか、その理由が見つからない。
突然、手帳の中に挟まっていたメモが床に落ちた。拾い上げてみると、そこには「忘れられた路地、午後3時」とだけ書かれていた。蓮は時計を確認する。午後2時を過ぎていた。
「忘れられた路地」とはどこだろうか?手帳の中にそのヒントがあるかもしれないと考え、彼は急いでページをめくり始めた。やがて、ある事件の記録に辿り着いた。数年前に解決した誘拐事件の舞台となった場所だ。
蓮は手帳をポケットに押し込み、オフィスを飛び出した。街の喧騒の中で、かつての自分の足跡を辿ることにした。彼が向かったのは、街の裏通りにある薄暗い路地だった。
午後3時、蓮は「忘れられた路地」に立っていた。ここで何が起こるのかはわからないが、手がかりを見逃すわけにはいかない。すると、遠くから足音が近づいてくるのが聞こえた。蓮の心臓が高鳴る。
現れたのは、一人の女性だった。彼女は蓮を見るなり驚いた表情を浮かべた。
「蓮さん、やっと見つけたわ」と彼女は言った。
蓮は彼女の顔を見つめたが、何も思い出せなかった。
「あなたは誰ですか?」と彼は尋ねた。
女性は一瞬ためらったが、やがて深呼吸をし、静かに答えた。
「私は、あなたのパートナーだった人です。あなたの記憶を取り戻すために、共に戦った相棒です。」
蓮はその言葉に驚きつつも、どこか信じられない気持ちで彼女を見つめた。彼の記憶を奪った謎は、彼の目の前に立つこの女性によって解かれるのだろうか。
蓮の新たな旅が、ここから本格的に始まる。彼の記憶のカケラを集めるために。