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青い稲妻  作者: 北村美琴
第2部イリア編
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真夜中の逃走劇その2

「お~、来た来た。こっちこっち」

「あたし達も乗せて~」

「わあ、さっきより大きな車だね」


 バリー車とメドゥー車が広場に到着した時、さっそく大勢の人達に囲まれた。

 運転手のメドゥーとバリーを残して、圭一達は全員車から降りる。


「こりゃあ思ったよりいっぱい居るべ。おいら達の車じゃ全員は乗らないかもな」

「でもジンさん、さっきすれ違った支部の人の車って、もう一度戻って来るんじゃなかった?」

「そうだったべ。確かチラッとそんな事を言っていたべ。んじゃマヤ、乗れるだけ乗ってもらうべ」

「ええ」


 マヤ、ジン、圭一、中島がエスコートし、人々を車に導く。

 人々は目の前に居る圭一と中島が、地球から来た〈選ばれし者達〉であるかどうかなんて、いちいち聞かない。

 聞かなくても、レジスタンスのメンバーの一員としてDEX の脅威から救いに来てくれたという事実に感謝している。

 同じ星の人間だと思っているのか。

 そもそも、〈選ばれし者達〉なんていう存在自体を知らないかもしれない。

 マヤが地球から戻って来た時、レジスタンスの仲間に告げた存在だから。

 マヤ達のリングのライトに照らされ、車には乗れるだけ人々が乗り込んだ。

 お婆ちゃんが窓から手を出す。


「坊や達、悪いねえ。あたしの孫が先に支部とやらに行ってるんだ。ここまで生きて来てあたしゃ、支部に避難なんて初めてだよ」

「そ、そうなんですか……」

「ああ。あんた達の様な若い子が犠牲にならないように、早くこんな争いが終わるといいねえ」

「はい。ありがとうございます」

「頼むよ。これからはあんた達の時代だ。死なずに生きるんだよ」


 お婆ちゃんはそう言って圭一と中島の手をギュッと掴んだ。


「お婆さん……」

「この年になるとね、人の死に敏感になる。けど、あんた達若者が先に死ぬのは、辛いね」


 お婆ちゃんを乗せた車が出発して行く。

 その車を見送りながら、圭一達はお婆ちゃんの言った言葉を強く噛みしめた。


「戦争が奪うのは人の命だけじゃないべ。動物や植物、あらゆる生命の営みを奪って行く」


 ジンが呟く。

 彼も先ほどのお婆ちゃんの言葉に、思う所があったのだろう。


「そうですね。だから、今の私達に出来る事をやりましょう」


 ジンの言葉に共感したようにマヤが返し、圭一と中島はこくりと頷く。


「だべ。争いの中、どう動くかは人それぞれ。その中で今、おいら達がするべき事は……」

「この人達を、無事に避難させる事、ですね」

「そうだべ圭一君。さて、地図を見るとこの広場はズェ-地区の支部からそんなに離れてはいないべ。車で約10分てとこかな。すれ違った支部の車が折り返して戻って来るまで、あと2、3分って見てるべ」

「なら支部の車が戻って来るまで、俺達がここを守ればいいんですね」

「ええ中島君。えっと、残っている人達は、あと……」

「7人です」


 と、マヤの言葉に答える様に、避難する人々の中の男性が言った。


「おれ達、家族なんです。妻と息子、両親、あと、弟夫婦で」

「そ、そうなんですね」

「はい。本当は両親と息子だけ、先に車に乗ってもらう予定だったのですが、息子がダダをこねまして。どうしても、おれ達と一緒じゃないと嫌だと……。妻と離れるのが、不安みたいで。両親も、あやしてくれたのですが」

「仕方ありませんよ。まだ幼い息子さんみたいですから」

「はは。ご迷惑をおかけして済みません。それで両親も残ってくれて」

「迷惑だなんて、全然そんな事無いですよ。ぼく、車が引き返して来たら、みんなで一緒に乗ろうね」


 と優しく、マヤが男の子の頭を撫でようとした時、


 ガサッ。


 物音がした。

 車のエンジン音じゃない。

 ライトも点いていないし。

 まさかーー、


「ギー」


 悪い予感が当たった。

 暗闇からロボットが飛び出して来る。

 男の子の母親と思われる女性が悲鳴を上げた。


「きゃ~っ!」


 咄嗟にマヤ達は家族の身を守るべく回りを囲んだ。


「ジンさん、どうしましょう?」

「う~ん。圭一君、このままこの人達の安全を守りながら戦えそうだべか?」

「そ、それはちょっと、無理そうです」

「だべな」


 確かにこの広場、スペースがあるのはいいが、環境の為に照らしているライトがやや暗めになっている。

 ちなみにセンサーライトの為、昼間とか周りが明るい時は反応せず、暗くなって何かの気配がした場合のみ明かりが点くという設定だ。

 今は人が居るから照らされているが、そんなにパッと明るいという訳ではない為、マヤとジンのリングの明かりでフォローしなければならなかった。

 そんな状態でのロボット達の襲撃。

 圭一の言う通り、少し無理がある。


「なら、こうだべ」


 戻って来る車を待っている暇は無い。

 支部の方に向かって、少しでも走って逃げようというのだ。


「おいら達から離れずに、ついて来て下さいだべ。あ、坊やは……」

「大丈夫です。おれがおぶります」


 父親が男の子をおんぶした。

 リングを照らしたジンを先頭に、家族を真ん中に、圭一と中島が両脇で、マヤが後ろを守る。

 真夜中の逃走劇が始まった。




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