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青い稲妻  作者: 北村美琴
第2部イリア編
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真夜中の逃走劇

 用意してある車に乗り込む前に、圭一達は一旦部屋に戻り支度をする事になった。

 寝間着のままでは恥ずかしい。

 マヤもそそくさと部屋に戻り着替える。

 そういえばメドゥーとジンも、リラックスした様な格好だった。

 本人達は、〈部屋着〉だと言っていたが。

 まあどちらでもいいけど。

 想像するに、彼らも圭一達と同じく突然呼び出されたんだろう。

 もしかするとメドゥーは医務室のマグの所に行っていたのかもしれない。

 弟思いのお兄ちゃんだから。

 昼間の神殿での戦闘で服が汚れたのだから、洗濯に出すのは悪い事じゃない。

 このアジトの洗濯機は大きく、洗い、乾燥、そして意外に手間の掛かる畳みまでやってくれる。

 綺麗に畳まれた衣服が出て来るのを見るのは、実に気持ちいい。

 中はどうなっているのか分からないけど、ロボットの腕みたいのが出て来て、一生懸命畳んでいるのかな。

 上の方に汚れ物を入れる扉があり、下の出口から畳まれた衣服が出て来る。

 けれど仕分けはされていないので、これが俺の、私のというのは自分達で見るしかない。

 ま、畳んでくれるだけありがたいけどね。

 支度が済み、圭一達が外の車の所に集まる。

 この避難の手伝いにフィールズ博士は参加しない。

 行くのは圭一、中島、マヤ、メドゥー、ジン、バリーだけだ。

 博士は突然のアジトへの奇襲に備えて、圭一達のサポートをしながら、他のメンバーと共に残る事になる。

 博士が彼らのサポートをして下さるのなら、一緒に来れないのは仕方ない事だけど、クローンは何故来てくれないの?

 圭一は見送りに来たクローンにそれとなく聞いてみた。


「ソレハデスネ、ソノ……」

「……?」

「私ハ、DEX 二目ヲツケラレタ身デスカラ、危険ナ事ハサセラレナイト、バリーサンガ……」

「ああ、そういう事」

「済ミマセン圭一サン。私モ出来ルナラ一緒ニ」

「いいよ。無理しないで」

「アリガトウゴザイマス。ケレド、アナタ達ガ危ナイ時ハスグニ駆ケツケマスカラ」

「ありがと、クローン」


 バタン。


 車のドアが閉まる。

 人々を避難させる事を考えて、車は二台。

 メドゥーが運転する車には、マヤと圭一、中島が乗り込んだ。

 前の車はジンとバリー。

 メドゥー車はジンの車について行く事になる。


「じゃ、クローン。行って来るべ」

「ハイ。皆様、オ気ヲツケテ。何カアリマシタラ、連絡シテ下サイネ」

「分かったべ」


 車は出発して行く。

 夜の帳の中、クローンが手を振っていた。

 バリーのリングに、ズェ-地区の支部長から、早めに避難を始めたと通信が入る。

 避難を始めたのは、お年寄りと子供、怪我人などが多い。

 彼らは車に乗せられ、少しずつ慎重に、一台づつ支部へと移動して行く。

 他の人々は、歩ける者は歩いて。

 車が支部から戻って来るのを、待っている人は安全な場所で待って。

 もちろん待っている人々の側にも支部のメンバーが居て周囲を守っている。

 圭一達の到着を待ちわびながら。


「……それじゃ、DEX は今この時間も稼働しているって事ですか?」


 バリーから説明を受けたマヤが確認の為に復唱する。


「そう。〈奴〉の身体ボディは機械で、眠らないからね。いくら王様の脳が移植されているとしても、意識を奪われたままでは……」

「そんな……」

「でもはっきりそうとは言えないよ。実はね、昨日住民達の避難を手伝っていた支部のメンバーの話によると、一時的にDEX が動きを止めたそうなんだ。その……。その時にロボットが出て来た、と」

「バリー。その一時的というのは、時間にしてどれくらいだったんだべ?」

「……えっと、確か一時間……。いや、一時間半くらいだって言ってた様な……」

「ならその一時間半の間に、眠ってたかもしれないべな」

「……え?」

「いくら身体ボディが金属で出来ていても、脳が人の物なら、少しは休まないと疲れてしまうべ。徹夜も可能かもしんないけど、それって無理があるんじゃないべか? DEX もおいら達との戦闘で、傷ついてたんだし」

「そ、そうか……」

「それに自分が休んでいる間に、ロボットに人々を襲わせた、とも考えられるべ」


 凄~い、ジンさん。と圭一と中島が褒めた。

 ジンは照れる。


「そ、そうだべか。おいらは自分の考えを言っただけで、褒められる様な事は……。それにバリーの意見を否定した訳じゃないべ」

「分かってますよ。ジン」


 バリーは気にしていないという風に笑う。

 むしろ訂正してくれた事を、好意的に捉えているみたいだ。

 メドゥーがそっと小声で、圭一達にだけ聞こえるように呟いた。


「ジンは俺達の中で一番のしっかり者だからね。一見、のんびりしてる様に見えても」

「そ、そうみたいですね。自己紹介の時に聞いたような……、聞かなかったような……」

「ん? メド、何か言ったべ?」

「い、いや。気にせず運転してくれ」


 聞こえていたのかとメドゥーは心の中で焦った。

 そのやり取りを見てマヤが少しプッと吹き出す。

 向こうから明かりが見えた。

 車のライトだ。

 小さな子供達を乗せたズェ-地区の支部の車と、メドゥー達の車が今、すれ違った。


「避難の方は、順調に進んでるみたいだべ」

「そ、そうだねジン。あ、もう一台来た」


 バリー車に近づいて来る明かり。

 こちらに気付いて止まった。

 窓から運転していた支部の者が顔を出す。


本部アジトの者達か。待っていた。車に乗って避難したいという人々が、まだ大勢この先の広場で待っている。乗せてやってくれないか」

「分かったよ。DEXの様子は?」

「設置した監視カメラの映像によると、相変わらず地中に触手を突っ込んでエネルギーを吸い取ってる」

「変わらないんだね。人々が居る広場は、DEX の力の影響は無い?」

「……今のところは。でもなるべく急いで欲しい」

「了解」


 支部の車が行った。

 バリーがアクセルを踏む。

 メドゥー車も、その車に続くようについて行った。






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