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青い稲妻  作者: 北村美琴
第2部イリア編
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避難中

 博士からの通信も慌てた様に切れた。

 何しろ、『DEX の力の及ぶ範囲に居る住民達が避難しているから、その逃げ道を確保するのに力を貸して欲しい』という各支部からの要請ではなく、『その住民達を敵のロボットが襲っている』という話が来たものだから、博士が慌てるのも無理はない。

 しかしどちらにしろ、こちらが出動しなければならないだろう。

 が、博士の通信は、詳しい経過が分かるまでまだ待機、と言って切れた。

 そんな話を聞かされて、待機と言われても……。

 気持ちは焦る。

 大変な目にあっている人達が居るんだ。


「ど、どうしましょうメドゥーさん。僕達、このままここに居ていいんですか?」


 通信を受けた医務室で、圭一がメドゥーに尋ねた。

 が、メドゥーも、ベッドに横になっているマグも、椅子に座っているマヤも黙ったまま口をつぐんでいる。


「あ、あの……」

「圭一」


 マヤが椅子から立ち上がった。

 真っ直ぐ圭一を見つめて側に歩いて来る。


「圭一。焦らない方がいいわ。多分いま研究室ラボでは、バリーさんや博士、ジンさんやクローンが各支部と連絡を取りながらどうするか決めてる。こういう時は、焦ったら負けなのよ。落ち着いて、もう一度博士達から連絡が来るのを待ちましょう。大丈夫。すぐ出撃しないって事は、支部のメンバー達が頑張っているって事。信じましょ。彼らも同じレジスタンスのメンバーだから」

「マヤ……」

「な~んて。敵に捕まっていた私が偉そうな事言える立場でもないけど」

「そ、そんな事……」

「でもね。私達もつい数時間前、DEX の集団と一戦を交えて来たばかり。まだ疲れも残っているそんな状態で援護に向かっても、逆に迷惑をかけてしまうだけよ」

「残念ですけど、マヤちゃんの言う通りです」


 マグが身体を横向きにして圭一と中島を見、話に入って来た。

 マヤはマグが圭一達を見やすいよう、体の向きを変え、一歩後ろに下がる。

 せっかくマグ自ら圭一達と話をしようとしているのだ。


「圭一さん中島さん。あなた達は来たばかりですからご存じないのかもしれませんが、こういう時、不用意に功を焦ってしまうと、逆に敵にやられてしまいかねません。DEX は優れた知能を持っています。動かないフリをして、二重三重にも罠を用意しているかもしれません。そうなると、住民達だけじゃなく、支部の仲間達まで危ない目に合ってしまうかも」

「マグさん……」

「勘違いしないで下さい。自分はあなた達などどうでもいい。ただ、マヤちゃんに危険が及ぶ可能性があるのを防ぎたいだけです」


 それでもいい。

 忠告してくれただけでも。

 ツンデレ的な言動でも、彼なりにちゃんと話してくれたって事なんだから。


「マグさん」

「だから……。とりあえず今はこの基地に居て。勝手な行動はしないで下さい。いいですね?」

「分かりました」


 勝手な行動も何も、外に出たって何も分からないんだから。

 まあいいけどね。

 マグはまたプイッと背中を向ける。

 やれやれ。

 まあ、とりあえずここは言われた通りにしますか。

 気持ちが変わらないうちに。

 メドゥーはマグの事を後は医務室のスタッフに任せて、食べ終わった食器を片付けたあと自分の部屋に戻るという。

 なら、


「マヤちゃん、俺達も」

「そうね。中島君」


 マグの様子も見れたし、話も聞いてもらえたし、そろそろ自分達も部屋に戻ろうかと、マヤ、圭一、中島はメドゥーの後に続いて扉に近づいた。


 カチャ。


 ドアノブに手をかける際、圭一はもう一回マグが気になって一瞬振り向く。

 メドゥーとマヤには笑って挨拶をしていたマグだが、圭一と目が合った途端、視線を下にずらそうと動かした。

 圭一もそれを察してそのまま部屋を出る。


「……ふう」


 彼らが居なくなった後、ベッドの上でマグが一人、ため息をついた。

 それはどういう意味のため息なのか。

 圭一と中島が出て行ったという安堵なのか。

 それとも自分の態度に対する悔いなのか。

 それは本人にしか分からない。


 ーー夜。


 圭一達が部屋に帰ってから一時間後、今度はバリーから通信が来た。

 圭一と中島はリングを手首に填めていないので、部屋のモニターでそれを受ける。

 それによると、今日避難していた住民達は、支部のメンバーの支援を受けて、無事ロボットの襲撃から逃げ切り、各支部に全員到着したという事だった。

 尚、連れて来ていた彼らのペットも元気だという。

 良かった……。

 安心した。

 明日は二回目の避難計画を実施するそうだ。

 だが明日はより厳しくなるだろう。

 DEX が触手からエネルギーを吸い取る範囲も広がって来ている。

 だから圭一も呼ばれるかもしれない。

 その為に今、準備をしている。

 まあ、準備といっても、せめて英気を養う事。


「どうした圭一。明日の為に、早く休んだ方がいいぞ」

「そうなんだけど中島。なんだか興奮して眠れなくって」

「はは。実は俺もそうなんだよ。でももしかしたら、出るのは夜中になるかもしれないって言われたよな」

「……うん」

「ならなおさら……。っと、『電気オフ』」


 中島の言葉に反応し、部屋の明かりが消える。


「……お休み、圭一」

「うん」


 が……。

 正直言って、すぐには寝れなかった。



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