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青い稲妻  作者: 北村美琴
第2部イリア編
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待機中

 博士とバリーが各支部に連絡した時、あまりの話の内容に、支部長達からは不安と驚きの声が上がったという。

 そこまでは、圭一達でも想像出来た。

 DEX の中に王様の脳が移植されていて、さらに戦争の為に利用されていたと、今聞いても信じたくない内容だったから。

 ショックを受ける人も出たんじゃないかと。

 実際居たみたいだ。

 森の北、ズェ-地区の年配女性支部長は、若き王様を崇拝していて、亡くなられた時も倒れ込んだらしいが、今も衝撃を受けてすすり泣いて、会話が続かなかったらしい。

 それでも王様の遺志を継ぎ、人々の避難に協力してくれるそうだ。

 あと二、三日のうちに。

 何とかしないと。

 時間はあるようで無い。

 博士達の通信の時には薬で眠っていたマグも、その30分後には目を覚ましていた。

 メドゥーは、起きるまでずっと付き添っていてくれたらしい。


「……兄さん?」

「目が覚めたかマグ。気分はどうだ?」

「うん。寝たら良くなった。腕も……」

「おっと。DEX の光線はロボットのビームとは違う。お前の怪我は単なる火傷じゃない。穴が開いていたそうだ」

「……貫かれて、いた……と?」


 マグは包帯の巻かれた右腕を見て呟く。

 メドゥーはフッ、と苦笑するように答えた。


「いや。貫かれてはいない。血管も破れていた訳じゃない。それは幸いだった。お前は、そういう風に感じたのか? 痛かっただろう。それなら、治るまでに時間がかかるというのも分かる」

「ロボットのビームとは違う、DEX のだから?」

「ああ。ドクターは絶対に治すと息巻いてるがな」

「フフッ。感謝するよ」

「ああ。そうだな」


 この後、マグはメドゥーから博士達の通信の内容を聞いたが、支部のメンバーに任せて自分達は待機だという事が分かり、口をつぐんだ。


「どうした? マグ」

「待機、ねえ」

「不満か? まあ俺達に出来る事は無い」

「フィールズ博士の弟子の一人とはいえ、兄さんは武闘派だからね。まあ、怪我しちゃったら自分も出来そうな事は無いけど」

「だな。何か食べるか?」

「そうだね。まあこうなったらじっくり治すよ」

「そうしろ。栄養付けてな。今のお前の仕事は、怪我を治す事だ」


 遅くなったがお昼の時間だな、とメドゥーはドクターと看護ロボットの許可を得て、自分と弟の分の食事を取りに行った。


 ざわざわ。


 今日のキッチンは混んでいる。

 調理場では人間に混じってロボット達も大忙しで働いていた。

 メドゥーはカウンター越しに調理場の中の人に話しかけた。

 ここでのシステムは今みたいに調理場の者に食べたい料理を頼むか、モニター画面で料理を探して注文するかのどちらかしかない。

 メドゥーの呼び掛けに、ちょっと小太りのおばさんが出て来た。


「何か、おばちゃん。今日は混んでるねえ」

「ああメド。そうなんだよ。みんな一休みして来たのか、おんなじ時間に重なってさあ。まあ戦いがあったって聞いたからねえ、それも仕方ない事さ」


 アジトのみんなからおばちゃんと呼ばれ、親しまれているこの女性。

 厨房ではベテランの位置にいる。

 本名はミカーラ。

 きっぷが良くお喋りで世話好き。

 この女性の作った物はほぼ何でも美味しいと評判である。


「で、メド。何が食べたいんだい?」

「そうだな。俺は、〈ミカーラ特性玉子丼・サラダとスープ付き〉。あと、マグの分も頼みたいんだ」

「ああ。マグ、怪我しちゃったんだって? なら、これ持ってきな。栄養満点、野菜たっぷりスープ大盛り。あんたのスープも特別にこれにしてやるよ。あと、マグにはパンもね」

「ありがとおばちゃん。じゃあ、そうしてくれ」

「はいよ! 待ってな。今用意するから」


 で、メドゥーがカウンターで料理を待っている時、空いた皿を片付けに来たマヤ、圭一、中島と会った。


「あ、メドゥーさん。今ご飯ですか?」

「ああ圭一君。ちゃんと片付けてくれるんだね」

「はい。皿を片付ける棚がありますから。この星の料理、美味しいですね」

「そう? 嬉しいね。地球とは違うだろう?」

「初めて食べた物もありますけど……。まあ、美味しかったです」

「おっと、合わなかったかな?」

「……え、ええまあ。サラダに入っていた、赤く四角の野菜が……」

「あ、あれね」


 メドゥーには圭一の言った野菜に心当たりがあるようだ。


「あれは確かにちょっと苦いよな。チ-チって木に生える豆の一種なんだ」

「豆? あれ豆なんですか?」

「どうしたんだ? そんなに驚いて……。中島君まで」

「す、済みません。地球だと豆ってのは、だいたい丸い物なので」

「そうなのか。その星によって違いがあるものなんだな。で、何を食べたんだい?」

「私達全員同じ料理で、〈ミカーラ特性玉子丼・サラダとスープ付き〉です」


 圭一の代わりにマヤが答えた。


「へえ、俺と同じメニューだ。おばちゃん、今日人気あんね」

「今日、じゃなくていつもと言って欲しいね。女は褒められると、嬉しくなるもんさ」

「それは、女だけとは限らないんじゃ……」

「んな事より、ほら出来たよ。早くマグの所に持って行ってやんな」


 ミカーラおばちゃんはカウンターに出来立ての料理を置く。

 うん、美味しそう。


「メドゥーさん、マグさんの所に行くんですか?」


 圭一の呼び掛けに、カウンターから料理を取ろうとしたメドゥーが振り向く。


「そうさ」

「なら、僕達も行っていいですか? お見舞いを、したいんで」

「あ……」


 メドゥーは戸惑う。

 マグは圭一君達をあまり良く思っていないようだ。


「メドゥーさん、私も行くから、いいでしょ?」

「マヤ……」

「私もマグの怪我の状態、気になるし」


 そんな笑顔で言われちゃ。

 断れない。


「じゃ、決まりね」


 マヤはマグの分の料理を、さっと取った。











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