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青い稲妻  作者: 北村美琴
第2部イリア編
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動き始める危機

 圭一も、マヤも、中島もまだ、誰もその銃の安全装置を外した音に気づいていない。

 それもそのはず。

 モヒカンの男の言動に集中していたというのもあるが、何よりその銃の音が鳴った場所が、彼らが居る場所より離れていたから。

 何処から、何を狙っているというのも探れないでいた。


「はぁ、はぁ」


 モヒカン男はまだ息を整えていた。

 クローンに殴られたのがよほど痛かったのか。

 ほっぺたは赤く腫れている。

 そのクローンは鎖を掴んだまま、警戒を解かない。

 放してしまってもいい。

 が、放した瞬間何かあったら困る。


「んな、おっかねえ顔しないでくれよ。オレ、はぁ、なんもしてねえだろ?」

「……」

「分あったよ。はぁ。ちゃんと話すから……。DEX は……」


 ビ--。


 その時、バリーの持っているコンピューターが危険を知らせる。

 その警告を見たバリーが上を見上げた。


「みんな、空だよ!」


 銃弾が発射される。

 男の右腕をかすった。

 びっくりして男は鎖を落とす。


「な、何?」

「圭一君、ステルス機だ。敵が上空から僕達を狙っている」

「え?」


 だけど狙われていたのは……。


「うわっ!」


 モヒカンの男の方だ。

 肩を撃たれた。

 血が流れる肩を押さえ、痛みで顔を歪めしゃがみ込む。


「まさか、DEX の事を話させない為に……」

「仕方アリマセン。コノ方ヲ守リマショウ」

「そうだな」


 クローン、メドゥー、マグが男の周囲を囲む。


「あ……、あんたら……」

「お前には聞きたい事が残ってる。撃たせる訳にはいかない。バリー!」

「OKメド。ステルス機の位置を探すよ。博士、お願いします」

「う、うむ」


 フィールズ博士は白い指揮棒らしき物を掲げた。


「あれは……?」

「集音器みたいな物かな。空気抵抗の音とか、エンジン音とかキャッチする事が出来る棒よ」

「な~る。音を集めて位置を把握するという訳か」


 圭一と中島の疑問に、マヤが答える。

 弾を発射した音をキャッチした。


「メド、右だ!」

「は、はい!」


 男を庇う様に覆い被さる。


 カツン。


 DEX と戦った際に装置していた腕の防具に弾が当たり、弾け落ちた。


「あ、危ね。おい、お前。当たってないか?」

「あ、当たってはねえけどよ。なんでオレを……」

「言ったろ? 聞きたい事があるって」


 男は息を吸い、黙る。

 次は何処だ。


「メド、次は君の……、男の左だ!」

「了解! って、左はがら空き!」

「兄さん自分が! っ!」


 弾はマグの左上腕部を傷つけた。


「マグ!」

「平気、これくらい! バリー、まだですか?」

「見つけた! ステルス機はクローンのほぼ真上!」

「っしゃ~!」


 ジンがエネルギー銃を担ぎ、撃った。


 ズバン。


 煙と共に、フラフラとコントロールを失った敵のロボットが運転する車が落ちて来る。

 エネルギー銃が翼に命中した瞬間、姿を消す事が出来なくなり、圭一達の目にも捉える事が可能になったのだ。


「どうだべ! おいらの技術は?」

「凄いわ! ジンさん」

「へへ。だべ」


 マヤに褒められ、ジンは鼻の下に指を置いて笑う。

 メドゥーやバリー、クローンだけじゃない。

 彼にだって出来る事がある。

 しかしバリーの言葉一つで空中の、しかも姿無き敵の車の位置を読み取り射抜くとは。

 マヤに褒められなくても腕は良いのかもしれない。

 車は圭一達の頭上を通り落下、炎上した。

 伏せていた為圭一達に影響は無い。

 燃える車からロボットが二体降りて来る。

 一体が上空から銃を発射していたのか。

 まだ手に持っている。


 カチャッ。


 その銃がマヤに向けられた。

 メドゥー達に守られていたモヒカンの男がメドゥー達の間から抜け、マヤを庇う様に前に出る。


「おい、お前! 何する気だべ!?」


 ジンの問いに男は笑いながら振り向く。


「オレが奴らを引き付ける。あんたらはその間に逃げたらいい」

「へ?」

「DEX はこれからこの惑星のエネルギーを吸い取り巨大化する。本気であんたらを潰す算段さ」

「……な」

「そして邪魔する者が居なくなった星を支配下に置く。DEX とロボット達の星になるんだ。そこのロボット達はもとは死んだオレの仲間。オレはそいつらを道連れにする」

「な。止めるべ!」

「あんたらに助けられて思いだしたのさ。オレもこの国を愛してたって事をな!」


 男は着ていたシャツを脱ぎ捨て、上半身裸になった。

 腰に爆弾が巻き付けられている。


「こいつがありゃ、ロボットごと吹き飛ばせる。あんたらはとっととこの場から逃げた方がいい。DEX がこの星のエネルギーを吸い取るんだったら、他の住人だって危険だろ? それと……。悪かったな、お嬢ちゃん!」


 マヤに謝り、男はロボットに向かって走る。

 ロボットが銃を撃った。

 男の胸に当たり血がしたたるが構わない。

 怯みながらも先に進む。


「これでオレも……、はぁ。少しはこの星の為に……」

「ま、待つべ!」

「……あばよ!」


 ロボット二体を両手で抱く様に抱え、男は爆弾のスイッチを入れる。

 ジンの静止も空しく、最後は、笑って、逝った。

 爆風吹き荒れる中、圭一達は絶望的な目で炎を見ている。

 助けられなかった。

 ジンは後悔の涙を浮かべる。


「……行こう」


 博士が車に乗り込む。


「マグの手当てをしないと。それにDEX が巨大化するという話が本当なら、周辺の人達を何処かに避難させる必要性も出てくる。とりあえず、アジトに戻ろう」

「……」

「みんな。悲しんでばかりもいられない。我々は、行動を起こさなければ」

「はい……」


 マグと一緒にメドゥーが車の席に座った。

 圭一達も動く。


(それに、王様……。あの方が望まれた事だ)


 ハンドルを握りながら、博士は決意を固めた。


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