動き始める危機
圭一も、マヤも、中島もまだ、誰もその銃の安全装置を外した音に気づいていない。
それもそのはず。
モヒカンの男の言動に集中していたというのもあるが、何よりその銃の音が鳴った場所が、彼らが居る場所より離れていたから。
何処から、何を狙っているというのも探れないでいた。
「はぁ、はぁ」
モヒカン男はまだ息を整えていた。
クローンに殴られたのがよほど痛かったのか。
ほっぺたは赤く腫れている。
そのクローンは鎖を掴んだまま、警戒を解かない。
放してしまってもいい。
が、放した瞬間何かあったら困る。
「んな、おっかねえ顔しないでくれよ。オレ、はぁ、なんもしてねえだろ?」
「……」
「分あったよ。はぁ。ちゃんと話すから……。DEX は……」
ビ--。
その時、バリーの持っているコンピューターが危険を知らせる。
その警告を見たバリーが上を見上げた。
「みんな、空だよ!」
銃弾が発射される。
男の右腕をかすった。
びっくりして男は鎖を落とす。
「な、何?」
「圭一君、ステルス機だ。敵が上空から僕達を狙っている」
「え?」
だけど狙われていたのは……。
「うわっ!」
モヒカンの男の方だ。
肩を撃たれた。
血が流れる肩を押さえ、痛みで顔を歪めしゃがみ込む。
「まさか、DEX の事を話させない為に……」
「仕方アリマセン。コノ方ヲ守リマショウ」
「そうだな」
クローン、メドゥー、マグが男の周囲を囲む。
「あ……、あんたら……」
「お前には聞きたい事が残ってる。撃たせる訳にはいかない。バリー!」
「OKメド。ステルス機の位置を探すよ。博士、お願いします」
「う、うむ」
フィールズ博士は白い指揮棒らしき物を掲げた。
「あれは……?」
「集音器みたいな物かな。空気抵抗の音とか、エンジン音とかキャッチする事が出来る棒よ」
「な~る。音を集めて位置を把握するという訳か」
圭一と中島の疑問に、マヤが答える。
弾を発射した音をキャッチした。
「メド、右だ!」
「は、はい!」
男を庇う様に覆い被さる。
カツン。
DEX と戦った際に装置していた腕の防具に弾が当たり、弾け落ちた。
「あ、危ね。おい、お前。当たってないか?」
「あ、当たってはねえけどよ。なんでオレを……」
「言ったろ? 聞きたい事があるって」
男は息を吸い、黙る。
次は何処だ。
「メド、次は君の……、男の左だ!」
「了解! って、左はがら空き!」
「兄さん自分が! っ!」
弾はマグの左上腕部を傷つけた。
「マグ!」
「平気、これくらい! バリー、まだですか?」
「見つけた! ステルス機はクローンのほぼ真上!」
「っしゃ~!」
ジンがエネルギー銃を担ぎ、撃った。
ズバン。
煙と共に、フラフラとコントロールを失った敵のロボットが運転する車が落ちて来る。
エネルギー銃が翼に命中した瞬間、姿を消す事が出来なくなり、圭一達の目にも捉える事が可能になったのだ。
「どうだべ! おいらの技術は?」
「凄いわ! ジンさん」
「へへ。だべ」
マヤに褒められ、ジンは鼻の下に指を置いて笑う。
メドゥーやバリー、クローンだけじゃない。
彼にだって出来る事がある。
しかしバリーの言葉一つで空中の、しかも姿無き敵の車の位置を読み取り射抜くとは。
マヤに褒められなくても腕は良いのかもしれない。
車は圭一達の頭上を通り落下、炎上した。
伏せていた為圭一達に影響は無い。
燃える車からロボットが二体降りて来る。
一体が上空から銃を発射していたのか。
まだ手に持っている。
カチャッ。
その銃がマヤに向けられた。
メドゥー達に守られていたモヒカンの男がメドゥー達の間から抜け、マヤを庇う様に前に出る。
「おい、お前! 何する気だべ!?」
ジンの問いに男は笑いながら振り向く。
「オレが奴らを引き付ける。あんたらはその間に逃げたらいい」
「へ?」
「DEX はこれからこの惑星のエネルギーを吸い取り巨大化する。本気であんたらを潰す算段さ」
「……な」
「そして邪魔する者が居なくなった星を支配下に置く。DEX とロボット達の星になるんだ。そこのロボット達はもとは死んだオレの仲間。オレはそいつらを道連れにする」
「な。止めるべ!」
「あんたらに助けられて思いだしたのさ。オレもこの国を愛してたって事をな!」
男は着ていたシャツを脱ぎ捨て、上半身裸になった。
腰に爆弾が巻き付けられている。
「こいつがありゃ、ロボットごと吹き飛ばせる。あんたらはとっととこの場から逃げた方がいい。DEX がこの星のエネルギーを吸い取るんだったら、他の住人だって危険だろ? それと……。悪かったな、お嬢ちゃん!」
マヤに謝り、男はロボットに向かって走る。
ロボットが銃を撃った。
男の胸に当たり血がしたたるが構わない。
怯みながらも先に進む。
「これでオレも……、はぁ。少しはこの星の為に……」
「ま、待つべ!」
「……あばよ!」
ロボット二体を両手で抱く様に抱え、男は爆弾のスイッチを入れる。
ジンの静止も空しく、最後は、笑って、逝った。
爆風吹き荒れる中、圭一達は絶望的な目で炎を見ている。
助けられなかった。
ジンは後悔の涙を浮かべる。
「……行こう」
博士が車に乗り込む。
「マグの手当てをしないと。それにDEX が巨大化するという話が本当なら、周辺の人達を何処かに避難させる必要性も出てくる。とりあえず、アジトに戻ろう」
「……」
「みんな。悲しんでばかりもいられない。我々は、行動を起こさなければ」
「はい……」
マグと一緒にメドゥーが車の席に座った。
圭一達も動く。
(それに、王様……。あの方が望まれた事だ)
ハンドルを握りながら、博士は決意を固めた。




