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青い稲妻  作者: 北村美琴
第2部イリア編
85/152

願い

 ピピッ。ピピッ。


 映像が揺れて軽く点滅する。

 王様ご自身が語られた内容によると、王様の脳だけ敵の科学者の手によりDEX に移植されて、無理やり動かされているという事か。

 DEX の脳として。

 にわかには信じられない、信じたくない事だ。

 では今まで戦って来たDEX は?

 人間としての肉体を失い、大切な記憶をいじられ、惑星を破壊する為に調整された王様。

 我々は、守るべき大切なお方と戦っていたのか。

 衝撃の事実に博士以下、苦い顔をして何も言えなくなる。

 どうして……。

 どうして、こんな事が出来るというのだ。

 一国を担う大切なお方。

 若くして突然王になられた為、政治的な事案は疎い所も見られたが、それでも皆と共に、国の為尽くす所存であらせられたのだ。

 それが、何故にこのようなお姿にならなければならない。

 残酷だ。

 余りに残酷過ぎる。


「許さぬぞ……!」


 博士は拳を握り、目を血走らせた。

 ここまで敵を憎いと思った事は無い。

 むしろ初めてかもしれない。

 その殺気みなぎる鬼気迫る表情に、メドゥー達もおののき、声がかけられなくなった。


(フィールズ……)


 その博士の顔を見ても、王様は諭すように語られる。

 どうしても今、伝えておきたい事がおありなのだろう。


(私の事を、弟みたいに思っていてくれていた事は知っている。私も、そなたの事を兄のように感じていた。私にとってそなたは師であり、憧れであり、兄だった。共に過ごせた事に感謝している。だからこれは抵抗なのだ。DEX という器から出た、私の、心の抵抗。DEX に囚われていても、私の心は完全に消えた訳ではなかった。フィールズ、そしてレジスタンスのみんなよ。そなた達に、会えて良かった)

「王様……」

(選ばれし者達よ。フィールズを支えてくれてありがとう。そして、この惑星に来てくれてありがとう。このような姿になっては、私は、礼を言う事しか出来ない)

「い、いいえ」

(だから最後に、伝えさせてくれ。DEX は、まだ完全に起動した訳ではない。一時的に止まっているだけだ。もうじき私はまた、DEX の中に封じ込められるだろう。そうしたら、そなた達と話はもう、出来なくなる)

「お、王様……!」

(フィールズ……。私の願いだ。DEX が本来の力を取り戻す前に……、私ごと、破壊、を……)

「王様っ!」


 ピシュッ。


 王様の映像が消えた。

 DEX の瞳の光も、輝きを無くしている。

 どうしたんだ?

 再び王様の心がDEX の身体ボディの中に取り込まれたという事か。

 フィールズ博士は、信じられないという顔で、


「王様、王様、王様っ……」


 と、取り乱した様にDEX の腰を揺さぶり、叫んでいた。


「フィールズ博士……」


 圭一が神妙な面持ちで声をかける。

 博士はストンと、腰を落とした。


「博士!」


 メドゥーが寄って来た。

 彼に手を引かれる様に、うつむいた博士がゆっくり立ち上がりながら呟く。


「済まんなメド。圭一君も……。君達に、情けない姿を見せてしまった」

「い、いいえ」

「王様に……、わたしの記憶の中の王様に……、またお会い出来るとは思いもしなかった。まさか、このような形で……」

「……はい」

「あの時の……。別れの時のわたし達に向けて下さった優しく勇ましい笑顔は、今でもこの胸の中に刻まれている。王様……、ああ。このような事になろうとは……」

「博士……」

「王様、ああ……。出来るなら、貴方も一緒にお連れしたかった」

「今さら後悔しても遅いぜえ」


 DEX の後ろ。

 じゃらじゃらと鎖を振り回すガラの悪そうな緑のモヒカンの男が、こちらに向かって歩いて来た。


「誰だ?」


 メドゥーの問いに男が答える。


「オレか? オレはこの国を転覆させた犯罪者達の一人だぜ。あんたらが言うマッドサイエンティスト様に召集されてついて行ったんだぜえ」

「何っ!?」

「フハハハハハ。フィールズさんよ。この国にもう王様は居ねえ。居るのはオレ達と、そこのDEX だけだ。オレはそのDEX が本格的に稼働する手伝いをしてやっただけだ」

「なら、お前が王様のお心を……」

「そう。余計な事を言うから戻してやったのさ。大人しくDEX の中に入っていればいいものを」

「貴様!」


 フィールズ博士が男に光線銃を向けた。

 男は両手を上に上げているものの、挑発する様にニヤリと笑って言い放つ。


「おおっと、そんなもんでオレを撃つのか? 残酷だねえ。フィールズさんよ。あんたもオレ達と本質は同じなんじゃねえか?」

「……く」

「そうそう。大人しくしてればDEX を静止させる方法を教えてやるよ。な~んてな」


 ペロッと舌を出して、男が迫って来た。


「嘘だぜえ」


 ブン。


 鎖が博士に当たる直前、クローンが鎖を弾いた。


「お?」

「アナタハ……。何デコンナ事ガ出来ルノデスカ?」

「何で、って言われてもな。オレ、犯罪者だしい」

「理由二ナッテイマセン」

「そ~いう性格なんだよ、オレは!」


 今度は語気を強めてクローンを狙う。

 クローンは落ち着いてその鎖を受け止めた。


「ソウイウ性格、デスカ。残念デス。ソウイウ性格ノ人ハ逆二自分ガヤラレル番二ナルト、弱クナルト聞イタ事ガアリマス」

「……ん、んな訳……」

「試シテミマスカ?」


 クローンは鎖を引っ張り男を近づけると、その腹を狙って殴った。


「……ぐはっ」

「アラ。コレデモ少シハ手ヲ抜イタンデスヨ。サテ、DEX ガ完全二稼働スルトハドウイウ事ナノカ、モウ少シ説明シテモライマショウカ」

「は、話す訳ねえだろ! 馬鹿かあんた!」


 鎖がクローンに掴まれているので、男は片手が使えない。

 ならば、と蹴りでクローンを転ばせようと試みた。


 ビシュッ。


 脇腹に当たる。

 がクローンは少々ふらついただけで倒れない。


「痛っ。な、なんだあんた……」

「教エテモラッテイナカッタノデスカ? ナラ愚カナノハソチラノ方デスネ。私ハ人間デハナク、ロボットナノデス」

「な……」

「遠慮ナク行キマスヨ」


 今度は男の顔を殴った。


「ぐわっ」

「サテ、次ハ……」

「ま、待て……」


 男が手を上げる。

 ニヤリとした挑発めいた顔はしていない。

 クローンの攻撃が効いた様だ。


「デハ、聞カセテクレルト?」

「……ああ。でもちょっと待て。息を整えてからだ。はぁ」


 男が一呼吸した時、遠くで銃を構える音がした。





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