博士と王
「あ、貴方は……」
突如映像に現れた人物に、フィールズ博士は驚きの声を上げる。
三人の弟子は博士を見た。
この人物、もしかして博士の知り合いなのかもしれない。
自分達も過去に何かしら話を聞いた事があるかも……。
「う~ん」
改めて映像の人物を眺める。
若い。
年齢でいうと今のマヤ、圭一、中島と同じくらいか。
髪の毛がサラサラしてる。
分け目は真ん中。金髪。
服は、自分達よりは高価な素材だ。
お金持ちの少年……?
記憶の中、おぼろげながら見た事があるような。
だけど思い出せない。
博士は手を伸ばす。
「な、何故貴方がDEX の中に……。ああ……」
泣いている。
その光景を見たクローンが聞いた。
「博士……。コノオ方ハモシカシテ……」
「……」
「亡クナラレタ王様デハ?」
「えっ!?」
記憶を辿っていたメドゥー達だけじゃない。
これには圭一、マヤ、中島、マグ、レジスタンスの他のメンバーも驚きの声を上げた。
そう言われれば、確かに、どこかで……。
戴冠式の時だったか、スピーチされているニュースを見たような。
マヤやマグも微かな記憶があるような表情をする。
「そ、そういえば、自分昔テレビか何かで……。
王、様……?」
「わ、私も、小さい頃……」
両膝を地面についてうなだれていた博士が、ようやく顔を上げた。
「そう、だ」
ゆっくりと立つ。
「この方は、確かにわたしがお仕えしていた、この国の王様だ」
博士は王様との出会いを話してくれた。
「マヤ。わたしがレジスタンスに入る前、宮殿に勤めていた事を知っているね」
「はい。科学者として、いろんな研究をなさっていたと聞いています。父とも、仕事の関係で知り合ったと」
「そう。君のお父さんは、宮殿に必要な物資を届けてくれていた。いわば、ドライバーだったんだよ。特に、わたし達の研究に必要な物資をね」
「……え?」
「知らなかった?」
「……はい。デパートに勤めていると聞いていましたから」
「うむ。普段はデパートに居たんだよ。でもわたし達が必要な物を連絡すると、各階から調達して持って来てくれていたんだよ」
「研究に必要な道具もですか?」
「デパートの隣に工場があっただろう? あの工場はデパートで販売する物資を作るだけじゃなく、研究に必要な道具も作っていたんだ。皇室ご用達のデパートだったから」
「そうだったんですね。お父さん、重要な仕事を任されていたんだ……」
「随分助けられたよ。わたしも王様も宮殿に居た他の者達も。忙しくて手が離せない時に、お父さんが必要物資を届けに来てくれたから」
「お父さん……」
「暇な時期に何回かね、王様とお忍びでデパートを訪れた事があるんだ。品数の多さに、王様は驚いておられた。フフッ。君のお父さんには、バレなかったかな?」
その時の事を思い出し、博士に少し笑顔が戻った。
「博士……」
「フフッ。楽しかった頃の思い出だ。わたしは、十八才で宮殿に入った。ちょうど三十年前だ。その頃は父も居た。同じ研究室にね。そして父が病で亡くなり、わたしは二十歳で、父の研究を継いだ」
「……」
「やがて王子として、このお方がお生まれになった。当時の王、このお方の父上であらせられた先王の命で、わたしは王子の教育係として、勉学を教える事になったのだ」
「ソレハ、博士ガ先王ノ信頼ヲ得テイタカラデスカ?」
「そうかもしれん。宮殿勤めも長くなっていたからな。初めて王子様にお目にかかった時は、やんちゃな五才のお子であらせられた。ただ、理解力に優れ、頭の回転が早いという印象を受けた。それから、王子様とわたしとの関係が始まったのだ」
「博士のそのお顔を見ると、良好なお付き合いだったんだべ?」
「いや。時には手を焼かされもしたよ。何せやんちゃな性格であらせられたから、勉強が嫌になると、わたしの目を盗んで庭に逃げておられた。探しに行くと、木に登って隠れておられたよ。何度か、喧嘩もしたか」
「えっ!? 博士と王子様が、喧嘩をしたんですか?」
圭一の驚きの声に、フィールズ博士は笑いながら頷いた。
「そうだよ圭一君。わたしが注意すると、言葉巧みに言い訳をしてこられる。けれど根は素直なお方だ。ご自身がいけなかった部分があるとお分かりになると、素直に謝ってこられた。フフッ。年の離れた弟を見ている気分だったよ」
「は、はぁ」
「それでもストレスがかかり過ぎるのはいけないから、時には勉学を止めて、山へ繰り出したり、町へ出掛けたり。楽しかったよ。そして王子様が十六才に成長なさった時、突然の先王様と王妃様の事故で、王位を継ぐ事になられたのだ」
「そ、そうだ。その王様になられる時の戴冠式を、俺とマグがテレビで見たんですよ。で、でも……」
「何故先王様ト王妃様ハ、亡クナラレテシマッタノデスカ?」
「それは……」
フィールズ博士は悲しそうに口をつぐむ。
その理由は話したくない事なのか。
バリーが戸惑うように口を挟んだ。
「えっと、確か……、あの事故って……」
「いいよ、バリー。わたしが話そう」
フィールズ博士は真っ直ぐ、圭一達の方を見た。




