騙せるか、否か
「バリー、サン……」
DEX のアジトと化していた神殿から離れた森の中の洞窟。
車から降りたバリーがクローンの修理をしていた。
マグは洞窟入り口で見張っている。
仲間から連絡が来た。
DEX が圭一達先発隊を落とし穴に落として、その後マグの運転する車を追いかけ、この場所へ向かっていると。
それを聞いた時、最初にマグの頭によぎったのは、車ごと引き返して穴の中のマヤを助ける事だった。
だが後ろの席で必死にクローンを回復させているバリーはどうする?
今引き返したらDEX に見つかってしまう可能性の方が高い。
無論、バリーもその報告をマグのリングを通して聞いていたから、一瞬手が止まった。
(メド達が、落とし穴に……?)
助けたい。
博士達が心配だ。
リングから仲間の注意する声が聞こえる。
「……ただ、マグ。それにもしかしてバリーも聞いているかな? 博士達は落とし穴の中に居るけど、車で引き返して来ちゃ駄目よ。DEXは確実にそっちに向かってる。クローンを守る事を優先して。大丈夫。マヤや博士達は、私たちが助けるわ」
その言葉通り、車を森の木々の中で目立たなくして、ひっそりと洞窟の中で息をひそめていたら、博士達が助かったと、もう一度通信が届いた。
良かった。
これでクローンを回復させるのに集中出来る。
ガサッ。
森の中で音がした。
光線で一本、細い木が倒れる。
DEX だ。
ついに〈奴〉が来た。
車とこの洞窟は距離が離れている。
マグは巨石で洞窟入り口を隠し、バリーとクローンの元に。
クローンは起き上がっていた。
「クローン、起きたのか」
「ハイ。マグサントバリーサンノオカゲデス。アリガトウゴザイマス」
「そう。でもまだここで隠れていた方がいい。奴が来てる」
「奴、は車の側……。だね?」
バリーはコンピューター画面を眺めている。
車のある部分にはカメラが仕掛けられていた。
「そうです。バリー」
「なら僕らも動かない方がいい。モニターをチェックしながら奴の動きを探ろう。あ、奴が現れたようだ」
車のサイドミラーに仕込んである内部カメラに、DEX の姿がはっきりと捉えられた。
しかも車には森と一体化して見える様に、土に似せた布が掛けてあった。
その布も取られたという事か。
「フン。コンナ簡単ナ仕掛ケ、一発ダ」
触手がドアの取っ手を引く。
窓にも一応、外からは内部が見えないシートを貼っておいた。
「ヤハリ、逃ゲタカ」
誰も居ない。
それはDEXも予想していた事だ。
が、触手がシートに触れた途端、違和感を感じた。
カチッ。
何かのスイッチが入った音。
DEXが危険を察知し、その場から避ける間も無く、車が爆発した。
ドカアアン。
その様子をモニターで見守るバリー、マグ、クローン。
「どう、なった、んだ?」
「待ってくれマグ。これは……?」
「ア……」
動き出す巨体。
車が焦げて真っ黒になっている側で、DEXが一歩下がった。
クラッ。
ダメージは受けているよう。
が、その目は怒りに満ちていた。
「コンナ、罠ヲ、用意、シテイテ……!」
ビー。
光線で車を射つ。
車は壊れた。
「何処ダ。何処二居ル」
明らかに自分達を探している。
バリー達は顔を見合せた。
「やっぱり、車を爆発させたくらいじゃ、倒れなかったですねバリー」
「うん。ここが見つからなきゃいいけど」
「モッタイナカッタデスネ、車」
「仕方ないよ。作戦の為だ」
「バリー。奴に発信器は着いたんですよね?」
「うん。爆発と同時にDEXの身体に貼り付く事になっていたから、大丈夫だと思う。ほら」
画面は切り替わり、森の地図と、現在の〈奴〉の位置を示している。
「ナラバ、計画②、スタートデスネ」
「ああ」
如何にこの洞窟に彼らが隠れている事がバレない様に、DEXを騙せるか。
それが腕の見せどころ。
クローンがあるボタンを出して押した。
ブーン。
森の奥で何かが動く。
DEXがそっちを見た。
追いかける。
それは別の車と見せかけた小型のヘリコプターのメカだった。
音だけ似ている。
「ソッチカ。逃ゲタカ」
ヘリコプターは自動で森の木を避けて行く。
姿が見えない為、DEX は追いかけるだけ。
「よし。上手く誘導出来たみたいだ。今のうちにこの洞窟を出て、別ルートで博士達と合流しよう」
「慎重二行キマショウ。バリーサン、マグサン」
「OK」
マグが先に巨石をどかし、他に敵の仲間が居ないか確かめながら洞窟を出る。
バリーとクローンを導いた。
「バリー。敵のロボットは見当たらないようです。DEXはヘリコプターを車と思って、本当について行ったんですね」
「うん。でもクローンの言う通り油断は禁物。DEXだって馬鹿じゃない。途中で戻って来るかもしれないよ」
「分かりました。こちらへ回って下さい。洞窟の上の崖に道があったんです。遠回りになりますが、地図上では神殿への道と途中で合流します」
「了解。そっちの道に急いで回ろう。クローン」
「ハイ」
三人が崖に上った時、
バン。
DEXがヘリコプターを追いかけて行った方向で、煙が立ち上った。




