散り散りのメンバーその2
プヨン、プヨン。
弾力のある大きな風船の上で、メドゥーはトランポリンの様に軽くバウンドした。
落とし穴に落とされた瞬間、これは深く落ちるなと予感した。
思った通り、途中まで聞こえていた仲間達の叫び声が途切れ途切れになっていく。
(これはまずい)
バラバラになったんだ。
そう思った時、すぐ側で中島も一緒に落ちているのを発見した。
(中島君……!)
気絶してる。
メドゥーは腕を伸ばし中島の手を掴むと、ポケットから何かを落とした。
ボンッ。
落とし穴の底と思われる箇所に触れて、風船が膨らんだ。
その風船の上に着地する。
(ふう)
心臓がドキドキしている。
自分でも上手くいったもんだと思った。
もし底の方に鋭利な物でも仕掛けられていたら。
(この暗さだし、俺も中島君も、終わっていたかもしれないな)
まあ、光線で落とされたんだし、それは無いか。
DEX もそこまで余裕がなかったのだろう。
それにしても、随分深い所まで。
リングの明かりでも、天井までは届かない。
「う、うん……」
「中島君?」
「メドゥーさん? ここ、は?」
良かった。
中島君が気がついた。
メドゥーはこの場所はどうやら落とし穴の底らしいと説明した。
「風船……。メドゥーさんが助けてくれたんですか?」
「ああ。選ばれし者である君を、危険な目に合わす訳にいかないからね」
「あ、ありがとうございます。って、他のみんなは?」
「……ああ。周りに居ないのを見ると、底にたどり着いたのは俺達二人だけみたいだな」
「そんな……。圭一、マヤちゃん、博士!」
さっきまでの笑顔から一転、気まずそうな表情になるメドゥー。
「実は、落ちたショックでリングの通信機能が壊れてしまったみたいなんだ。明かりは点くんだけどね。君が目覚める前に試してみたけど、駄目だった」
「そんな。どうすれば……?」
「まあ何とかなるっしょ。こういう時こそ絶望しちゃ駄目だ。とりあえず、使えそうな道具が無いか探してみよう」
そんな肩を叩きながら明るく言われても。
こういうの初めてなんですけど。
でも、メドゥーさんはレジスタンスのメンバーで、経験上いろいろ知っていそう。
明るく振る舞っているのも、不安を取り除いてくれる為かも。
「う~ん、ナイフ二本か。俺がもう一本予備持ってるから三本で、これは君があの時使ってくれたスプレーだね。後は……。ああ、そうだ俺、ロープも持ってた」
メドゥーはぐるぐると丸められたロープを出した。
しかしそれは手のひらサイズ。
ペンライトの光を浴びせる。
通常の大きさに戻った。
「でもメドゥーさんこのロープ、どう使うんです?」
「ん? このロープの先にナイフをくくり付けて、そのナイフを壁の高い所に刺せば……」
「なるほど。それでロープをよじ登るんですね。でも、ナイフをどうやって刺すんですか?」
「それは、ね」
メドゥーは風船の上で二、三回軽く跳ねた。
そして最後のジャンプの時、
ボン。
風船が凹んで元に戻ろうとするタイミングを利用して、膝を曲げて勢い良く高く飛び上がった。
「わっ」
中島は元に戻った風船の上で仰向けに倒れるが、そのままの状態でジャンプしたメドゥーが壁にナイフを刺すのを見ていた。
「メドゥーさん、凄いです!」
風船に着地したメドゥーに起こされる。
「さあ、中島君、登ろう」
「は、はい。でも、ナイフ取れないですかね?」
「意外と心配性だな君は。けど大丈夫。この土、思ったより固かったんだよ。俺も強く刺さないと駄目だった」
「そ、そうですか。なら大丈夫ですね。登りましょう」
「ああ。じゃあまずは俺から登って、君の足場を作るよ」
「お願いします」
メドゥーはロープを持つ。
一応引っ張ってみた。
取れない。
よし、と壁に足をつけて真っ直ぐ登って行く。
それにしても、高く飛び上がりながら壁にナイフをつき刺すなんて芸当、メドゥーじゃなければ出来なかっただろう。
んで無事にナイフの所までたどり着いたけど、それからどうするつもりなんだ?
って、何とロープが結んであるナイフの柄に飛び乗って上に立った。
そして残りのナイフ二本を上の壁に刺す。
そのうちの一本に掴まりながら下の中島に向かって言った。
「いいよ中島君、上がって来て」
上がって来てと言われても、肝心の中島はブルブル震えていた。
ナイフの柄に乗るなんて、あんなの俺には出来ない。
かといって風船の上でいつまでも居る訳には……。
そんな中島を安心させる様にメドゥーは続けた。
「大丈夫だよ。登って来てくれたら俺が引っ張り上げるから」
の、登る。
この壁を、登る。
上を見上げたら圭一とマヤの顔が浮かんだ。
(中島……)
(中島君)
ゴクッ。
唾を飲む。
覚悟を決めてロープを握った。
壁に足をかける。
(そうだ。こんな所に居る訳には……)
怖かったけど必死に登った。
プシュウウウウ。
変な音がする。
ドキドキしながら下を見ると、今まで自分達が上に乗っていた風船が縮んで小さくなっていた。
人が離れるとしぼむんだ。
それだけではない。
何と自動的にメドゥーのポケットの中に戻った。
「うわっ」
凄い、なんて思っている場合じゃない。
少しでも手を離せば滑り落ちてしまう。
上ではメドゥーがバランスを取りながら片手を伸ばしていた。
手に触れる。
「中島君、その穴に足を入れて」
いつの間にか壁に小さな穴が開いていた。
メドゥーがあらかじめパンチしてたって感じだ。
引っ張られ、足場に足を入れ、メドゥーが握っている方と別のナイフに導かれる。
しっかり柄を握った。
その時、
「お~い、無事だべか~?」
さらに上から声が聞こえた。




