散り散りのメンバー
一体、何処まで落ちたのだろう。
鳥のさえずりも風の音も木々のざわめきも聞こえない、暗く静かな穴の中。
偶然にも出っ張っていた地面の上で、圭一とマヤは目を覚ます。
「け、圭一……」
「マヤ……」
起き上がって二人は辺りを見回す。
マヤがリングの明かりを点けた。
地上は?
どうやら天気は曇っている。
太陽は曇に隠れてしまったよう。
が推測すると四、五メートル近く落とされた感じ。
「マヤ、怪我は?」
「DEX にやられた傷はドクターに視てもらってほぼ痛みは消えたわ。落ちた衝撃で軽く擦ったみたいだけど。ここに緑が生えていて良かった。下が固い岩とかだったら、私達、大怪我してたかも」
「そうだね。あの高さから落ちて生きてたのは、運が良かったのかな?」
「選ばれし者の奇跡かもよ」
「そ、そんな。僕はただの人間だよ」
「フフッ。あら?」
下から声が聞こえる。
リングの光で照らして見ると、同じように足場に立って手を振っている人達の姿が見えた。
「あ、あれは……」
フィールズ博士だ。
それとジンも。
「お~い。圭一君、無事か~?」
フィールズ博士の声に圭一達も笑顔で応える。
斜め下の足場からフック付きの丈夫なワイヤーらしき物が投げられる。
フックが地面に刺さった。
確認した後博士とジンはワイヤーの先端を手で握り、ボタンを押す。
何とワイヤーが縮まり、博士達がぶら下がった状態で上に上がって来る。
圭一やマヤと合流した。
素手で握っても安全なワイヤーらしい。
「博士、ジンさん!」
「圭一君、マヤ。無事で何よりだ。まさかDEX に落とし穴に落とされるとは、思ってもみなかったがね」
「そうですね」
「けど、問題はメド達だべ。おいら達、あそこで必死に呼びかけたんだけど、気配どころか、声さえも全く聞こえなかったべ」
ジンが少し青ざめた顔で話す。
「ジンさん、リングに話しかけた?」
「ん? いや。リングでは通話しなかったべ」
マヤの指摘にジンは、あ、そうかという表情になる。
しっかり者のジンでも、落とし穴に落とされ、仲間達とも離ればなれになってパニックになったのだろう。
「ジン。リングでメドに通話してみてくれ」
「分かったべ、博士」
ジンが手首のリングに向かい呼びかける。
が、反応は無い。
「駄目だべ、博士」
「う、うむ」
「中島……」
圭一が行方不明の親友を心配してうつむく。
フィールズ博士がそんな圭一の肩に手をかけた。
「圭一君、きっと大丈夫だ。二人は生きている。わたし達がきっと見つける」
「は、はい……」
お願いしますという風に、圭一は博士達を見た。
ジンがもう一度手首のリングのモニターを見た。
指先でピッと操作する。
「博士、今メドのリングの位置情報を調べたべ。それによると、二人はこの穴のさらに深くまで落ちてしまったようだべ」
「それは、だいたい何メートルくらいだ?」
「う~ん、六、いや七メートルだべか」
「そんな……」
その深さを聞いて、マヤも泣きそうになってしまった。
「無事でいてくれればいいべな」
ジンも不安は隠せない。
フィールズ博士が一度片付けたフック付きのワイヤーを足場の下に向かって降ろす。
「ここで議論していても仕方がない。ここは何とかこのワイヤーで下に降りて、二人を救出しようではないか」
圭一、マヤ、ジンが顔を上げる。
同時に頷いた。
「博士のおっしゃる通りだべ。こんな所で待っていたって、いつまで経ってもメド達の様子は分からないべ。圭一君、おいらと一緒に下に降りてくれるべな?」
「はい。ジンさん」
「博士とマヤはここで待っているんだべ。大丈夫だべ。必ずメドと中島君を見つけて帰って来るべ」
「二人とも……」
「ん?」
「気をつけて」
マヤのその言葉に背中を押される様に、圭一とジンは笑った。
「それじゃ、博士」
「うむ。もしメド達を見つけたら、連絡してくれ」
「分かったべ」
ジンは圭一にワイヤーを手に巻き付ける様に、しっかり握るように言うと、リングのライトを下向きにして穴の奥を照らした。
「よし、行くべ」
「はい」
ボタンを押す。
ワイヤーが伸び、二人は降下して行った。
マヤは祈る様な気持ちで見つめていた。
(……圭一、どうか、無事で。そして、早く二人を連れて帰って来てね)
揺れるワイヤーの先で、ライトの明かりが光っていた。




