落とし穴
「見ツケタゾ」
DEX は一歩一歩確実に近づいてくる。
その目はニヤリ笑っていた。
狙った獲物は逃さないという感じで。
一ヶ所に固まっていてはなおさら危険だ。
ジンはバリーを見る。
クローンの傷はもう少し。
もう少しで直る。
マグに耳打ちした。
「マグ、二人を頼むべ」
「分かりました」
マグはそっと車の運転席に乗り込む。
その際チラッと圭一の隣のマヤを見たが、くっと自分の気持ちを押さえる様に唇を噛み、車を発進させた。
本音はマヤの手を引いて車に乗せたかったのだろう。
だがメドゥーと中島に何か言われるかもしれない。
仕方ない。
ここは自分のやるべき事を。
ブーン。
発進して行く車に気付きDEX が言う。
「マ、待テ」
待てと言われてもクローンを守る為、車を止める訳にはいかない。
メドゥーが前に出る。
「DEX 、俺が相手だ!」
「邪魔ヲスルナ!」
飛び上がったメドゥーに向かって光線が飛んで来る。
が、その光線は外れた。
メドゥーはDEX の胸の辺りを狙う。
飛び蹴りだ。
DEX は吹き飛ぶ、と思ったら耐えた。
「ふ、さすがに固いな」
メドゥーは着地するとニヤッと笑って言った。
その戦いを圭一達は固唾を飲んで見守っている。
「は、博士……」
「大丈夫だ圭一君。メドを信じて見守ろう」
「は、はい」
とは言うものの、相手は巨大なメカだ。
メドゥーさん、怪我なんかしなきゃいいけど。
そのメドゥーは、両手に手袋をはめていた。
そして両足のすねにも防具らしき物を着けている。
「あれは?」
中島が近くに待機していたジンに聞く。
「あれは対DEX 用に開発していた、メド専用の防具だべ。柔軟性のある、だけどダメージに強い金属で出来てる。あれだったら、殴っても蹴っても大丈夫だべ」
「なるほど。だから手とすねに……」
「だべ。んだけどおいらが開発したんじゃないんだべ」
「はは」
「お、始まるべ」
DEX と対峙しているメドゥー。
彼が防具を装着している間、DEX は攻撃を仕掛けて来なかった。
メドゥーと一対一でやり合う気なのか。
それとも?
どういう意図があるのか分からないけれど、それだったらこちらも本気でぶつかるだけ。
メドゥーが距離を詰める。
DEX は、触手を伸ばして来た。
その触手を避けたメドゥーは左手でDEX の身体にパンチ。
次に右手でも。
連続攻撃だ。
DEX は倒れない。
なら、と足を高く上げ、蹴るように払った。
ゴン。
DEX は地面に顔をつける。
「おお」
博士が身を乗り出した。
弟子の活躍が嬉しいようだ。
が、その博士に向かって、
ザッ。
身体を起こしたDEX が触手を伸ばした。
メドゥーが走る。
「博士っ!」
触手をギリギリ避けて、フィールズ博士と一緒に横に転がった。
「良かった~」
助かった二人の元に安堵の表情を浮かべてみんなが集う。
しかし、それこそがDEX に好機を与える行為だった。
DEX の発した光線が一ヶ所に固まっていた圭一達の足元に大きな穴を開ける。
「なっ……」
逃げるタイミングを逃してしまった一行は、暗い闇の底へと悲鳴を上げて沈んで行った。
「フッ。フフフフフフ」
地上ではDEX が歓喜の雄叫びを上げていた。
「コレデ、奴ラ、終ワリ。後ハ、逃ゲタ仲間ヲ捕マエル。コノ星ヲ支配スルノハ、私ダ」
もう一度圭一達が落ちて行った穴の中を眺めてから、DEX はマグが運転して行った車が向かった方向、森の中へと姿を消した。




