DEXとの遭遇
ジンの足下には焦げて黒ずんだボールが転がっていた。
そうか、もし触れてしまうと電撃を受けて危険な為、ボールを投げておおよその位置を確かめたという訳か。
圭一達が走って来た。
「これからどうするんです?」
という中島の質問に、ジンが笑う。
「そうだべな~。諦めて逃げるべか」
「……え?」
「なんてジョークだべ。中島君、呆れてるべか?」
まったく、こんな真剣な時に冗談は止めて欲しい。
「使うのは、これだべ」
「え? それって……」
マヤが地球に来た時に何度か仕様していた、物を小さくするペンライト?
それをポケットから出し、バリアーがあるはずの場所に向かって光を当てる。
ミシッ、という音がして、薄い亀裂の線が真ん中に向かって広がる。
「こ、これは……」
「このバリアー。ぴったりと通路を塞いでいるから、小さくするのは容易な事ではないべ。でも、このペンライトの性能を上げれば、壊すのは可能だべ」
「え? つまり……」
「圧力だべ。縮まろうとする時、物体は圧力の影響を受けるべ。その圧力を中央に集める様に調整すれば……」
パリン。
「ほら、力に耐え切れずに割れるという訳だべ」
「す、凄……」
「褒めなくていいべ。後は、見えない破片がそこらに落ちてるはずだから」
「コレデスネ?」
「だべ、クローン。それそれ」
ジンはクローンからカプセルを受け取った。
それをポンと落とす。
カプセルが割れ、中からゴム風船の様な物が出て来た。
何かを吸い込んでいる様な音がする。
「欠片を吸い込んでいるんだよ。掃除機みたいなもんさ」
メドゥーが教えてくれた。
「ふ~ん」
「踏んで怪我をすると悪いからね。もしもの為さ」
あ、音が止まった。
風船がカプセルの姿に戻る。
どうやらゴミを吸い終わると、自動的に元のカプセルに戻るらしい。
「さて、これでバリアーを破壊したべ」
ジンがカプセルを拾って、圭一達の方に振り向いた。
メドゥーも同じように笑う。
その時、前方を注意していたバリーから声が飛ぶ。
「メド、ジン、後ろ!」
「ん?」
その声に驚いて、メドゥーとジンはバリアーがあった方を向く。
ピーッピッピッピー。
そこに立っていたのは……。
カシャン、カシャン。
カタカタカタカタ。
機械音が響く。
大きな身体を引きずり、〈奴〉が姿を現した。
「DEX!!」
博士達全員揃って叫ぶ。
DEX は長い触手を伸ばしてきた。
圭一を捕まえようとしている。
「……っ」
圭一は後ろへ飛んでそれを避けた。
が、触手はさらに伸びて近づいて来る。
「させるか!」
メドゥーがDEX の触手を狙って、エネルギー砲を発射した。
ドウウウウ。
原子の渦の中で、触手は消えた。はずだった。
だが――、
「何っ!?」
消えたはずの触手が、再生した。
触手はそのまま圭一を捕まえ、抱え上げる。
「圭一っ!」
「圭一君!」
中島とフィールズ博士が叫ぶ。
「圭一サンヲ、離シナサイ!」
クローンがいつになく強い口調で言うと、そのまま圭一を捕まえている触手に飛びついた。
圭一から触手を引き離そうとする。
だが、DEX の他の触手が伸びて来て、クローンを壁に叩きつけた。
「ウッ」
クローンは床にひれ伏す。
バリーがすぐ駆けつけた。
「クローン!」
「問題アリマセンバリーサン。私ハマダ動ケマス」
「そ、そう? でも念のため」
バリーに支えてもらって立ち上がる。
「DEX ! 圭一君を離すべ!」
クローンの安全を確認したジンがDEX に言う。
しかしDEX は何も返事を言わない。
不気味に突っ立っているだけ。
圭一の苦しそうな声が聞こえた。
「……ううっ」
DEX が触手で彼を強く締め付けているのだ。
「止めろ!」
中島の親友を思う叫び。
DEX は無情に告げた。
「……殺ス」
「何?」
「選バレシ者ハ、殺ス」
DEX はそのままメドゥー達に背を向けた。
その場から通路の奥の方に移動し始める。
「ま、待て!」
慌てて後を追う博士達。
だがDEX は意外に素早く、やっと追いついたと思ったら、分厚い扉の向こうへと姿を消してしまった。
「ここか……」
はあはあと荒い息を吐きながら、レジスタンス一同は扉の前に立つ。
通路の一番奥。
バリアーの為にたどり着けなかった場所。
この扉の向こうに、DEX と圭一が……。
クローンが扉を押す。
あまりに分厚い扉の為、人間の力では開ける事は簡単ではなさそうだ。
だがクローンなら。
彼女はロボット。
人間よりは多少、力がある。
ギギギギギギ……。
ゆっくりと音を響かせ、扉は開いた。




