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青い稲妻  作者: 北村美琴
第2部イリア編
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希望の声

「う、うん……」


 薄暗い部屋の中でマヤは目を開けた。

 DEXの姿は見えない。

 身体中の火傷の傷がヒリヒリと痛む。


「……つうっ」


 手を当ててみたものの、すぐに痛みは消えない。

 それに傷口はあちこちに広がっていて、彼女の手一つじゃとても足りるとは思えない。

 DEXの放った電撃の威力が、それほどまで強かったという事か。

 マヤは諦めて手を離した。


(圭一……)


 悪夢の中からは無事に帰って来れた。

 でも今は誰も居ない部屋で一人、水晶の中に閉じ込められている。


(どうしよう)


 強い意志で悪夢からの脱出をはかったとはいえ、こうも寂しい部屋だとまた不安が押し寄せて来る。

 その時――、


 バアン!


 彼女の耳に小さな爆発音が届いた。


「な、何……?」


 と同時に微かな人の声。


「……マヤ、何処~?」

(あの声は……)

「圭一!」


 思わず口から声が漏れる。

 間違いない。

 あの声は確かに自分の愛しい人、圭一の声だ。


「圭一!」


 マヤは自分を奮い立たせる様に、もう一度彼の名を呼んだ。

 来てくれたんだ。

 自分を助ける為に。

 イリアの仲間と共に。

 きっと、きっと。

 マヤは自分の身体を囲んでいる水晶をキッ、と睨んだ。

 この窮屈な物体から出なければ。

 そして早く仲間達に会いたい。

 彼女は服の中に隠し持っていた刃渡り5センチほどの折り畳み式のナイフを取り出し、目の前の水晶を削り始めた。

 諦めている暇は無い。

 時間のかかる作業だが、傷を負った彼女の体では水晶を叩き壊す力は無く、かといって圭一達にあまり迷惑もかけたくもない。

 そう、これこそが今の彼女に出来る全ての事なのだ。


(私だって……、私だって何かしなくちゃ……。きっと圭一達だって、罠を撃破しようと頑張っているはずなんだから……。そうよ。音を上げてたまるもんですか。絶対、負けないんだから……)


 ガリッ、ガリッ。


 水晶を削る音だけが周りに響く。

 神殿の一室で、マヤの孤独の戦いが始まった。


 バン、バン。

 ガガガガガガガッ。

 ドドドドドドド。

 ベリッ、ベリッ。


 神殿の天井に仕掛けられた銃口から、一斉に光線が狙う。

 圭一と中島はそのレーダーに当たらないよう、安全な壁際に身を預け、メドゥー達の動きを見守っていた。

 メドゥーが弾丸に当たらないよう素早く通路を右へ左へ移動しながら、手にしたナイフで罠を沈めて行く。

 ジンとクローンが持っているビームガンでも正確に壁の光線銃を射抜いていた。


 ビー、ビー、ビー。


 銃声が止まった。

 罠は全て静かに停止している。


 プスプスプス。


 天井の砲塔が煙を上げながらポトッと落ちた。

 部屋の前のカメラのレンズは、メドゥーの一撃で壊されている。


「ふう」


 安堵の声が漏れる。

 ひとまず厄介な仕掛けは片付けた。

 後は部屋の鍵を。

 バリーと博士が走って来る。

 ドアのモニターに機械を近づける。

 何かを読み取っている様だ。

 コンピューター画面に映し出されるランダムな数字。

 暗証番号か。

 どうやらこの数字の中から四つの数字を選ぶらしい。


「……くっ」


 バリーと博士は迷った。

 狙いをつけた部屋は制御室。

 この中のコンピューターを操作出来れば、全ての部屋の鍵が開くはず。

 何故制御室だと分かったかというと、この扉だけカメラが二つ設置されていたから。

 だから大事な部屋かもしれないというのは予想がつく。

 が、その前にこんな試練が訪れるとは。


「うむむ……」


 扉の前で腕組みをして考える博士。

 バリーが博士の方を向く。

 彼の知識でもこれは駄目だったらしい。

 中島が通路の前方を見て大きな声を上げた。


「み、みんな。あれを!」


 彼が指差す先。

 巨大な岩がゴロゴロと転がって来た。

 それも通路ギリギリの大きさで、逃げ場も無い。

 DEXの罠が発動したか。


「チッ」


 一瞬躊躇する一同だが、すぐにメドゥーが思い出したように言った。


「ジン、あれを!」

「ほい来た!」


 ガチャッ。


 ジンが何かを武器の中から取り出し、メドゥーに渡す。

 メドゥーはコンパクトに畳まれたそれを組み立てた。


「よっしゃ~!」


 それは肩に担ぎ上げて使うバズーカ型のエネルギー砲だった。


「これで一気に吹き飛ばしてやるぜ!」


 グッ。


 メドゥーの引き金を握る指に力が入る。

 岩まであと数メートル。

 彼は標準を合わせて引き金を引いた。


 ドバアアアン。


 発射口から凄まじいエネルギーが流れ出る。

 岩は原子の渦に巻き込まれ、一瞬にして粉々に分解された。


「やった! メドゥーさん」


 圭一が喜びの笑顔を浮かべて彼の元に来る。


「す、すげえ……」


 中島まで驚いた顔して側に集まって来た。

 メドゥーは、前髪をかき上げ、カッコよく決める。


「いやあ、俺にかかれば岩の一つや二つ、どうって事ないね」

「じゃ、わたし達も格好良く決めさせてもらおうか」


 そう続けたのは、フィールズ博士だった。

 博士が視線を送ると、バリーが頷く。


「分かりました博士。この暗証番号、DEXの造られた日や、ここを占拠した科学者達の誕生日でもなく……」

「この神殿がお好みだった、国家の……、亡き王の誕生日だ」


 ビンゴ。

 部屋の鍵は開かれた。

























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