マヤ救出大作戦
金色の光が窓から優しく照らし、鳥達の唄が爽やかに耳の中に響いて来る。
朝ーー。
圭一の目覚めはまあまあ良かったといえよう。
昨夜からの疲れと緊張で、ぐっすりと眠れた様だ。
ベッドも心地良かった。
その人に合わせて、一番楽に眠れる高さに、AIがベッドと枕の高さを調節してくれる。
好みで耳元にヒーリング音楽も聞かせてくれる。
中島も圭一も、音楽は聞かなかったが、それでも楽に眠れた。
マヤの事を考えてて、圭一は眠れないと思っていたのに。
こういう科学なら、歓迎だ。
洗面所で顔を洗い終わると、中島が起きていた。
「おい。ドアの隙間に紙が挟まっていたぞ」
手紙、かな?
二人で確認してみる。
フィールズ博士が書いたと思われる内容だ。
『お早う。圭一君、中島君。今朝の目覚めはどうだい? 起きたら、休憩室に集まって』
そうか。モニターで起こすと二人の眠りを邪魔してしまうと思い、そっと手紙を挟んでくれたのか。
休憩室って、真ん中のドームの大広間の事だよね。
夕べ会議で行ったから大丈夫。
中島も顔を洗ってから行くというので、圭一だけ先に休憩室に向かった。
中に入ると、圭一と中島以外はみんな席に着いている。
圭一から遅れる事三分、中島もようやく空いた席に座る。
全員着席したのを見計らい、メドゥーが言った。
「よし、全員揃ったね。じゃあみんな朝食でも食べながら、昨夜のまとめをしよう!」
実はあの真夜中の会議の時、決戦は次の日の朝、つまり、朝ごはんを食べて支度を整えた後に出発しようという意見が出ていた。
何故なら、人質となっているマヤがDEXによって何かされているとしたら、助け出すのはなるべく早い方がいい、という結論に達したからだ。
さらに、こちらには圭一が居る。
彼が好きなのはそのマヤ自身。
だからマヤが傷ついたり、万が一殺されたりしてしまったら、彼が深く自分を責め、戦いを放棄してしまう可能性も考えられる。
だからそんな彼の思いを汲んで、この結論に達する事に反対する者は、誰一人としていなかった。
もちろんマヤの地球での〈友達〉である中島も同じ。
それだけ惑星イリアの人々は、選ばれし者圭一と中島の事を頼りにしているという事だろう。
あんな時刻に二人が会議に参加したのもそういう理由だ。
とにかく、そんな事情で、昨夜のうちにまとめられなかった作戦を、朝食を食べてながらまとめてしまおうというのが、彼らの考えである。
では、ここで彼らの作戦を、レポート風に書き記しておこう。
①出発から突入まで
・出発は支度が済んだ後、すぐ行う。
・その際、武器や防具などは、みんな車にまとめておき、持ち運びが楽な様にする。
・服装は動きやすく身軽な物。腰に一本ずつナイフを着用する。
・突入は神殿の扉を誰か一人が先に押して、安全確認しながら突入する。
②突入からマヤ救出まで
・突入後、バリーに部屋のロックを解除してもらい、なるべく急いで各部屋を、マヤが居ないかどうかくまなく探す。
・その際、通路の天井や部屋に仕掛けられている罠に注意し、協力して撃破する。
③マヤ救出から戦闘、脱出まで
・マヤを救出してDEXに見つかってしまった場合、もしくはその前の時点で襲われてしまった場合、戦える者は戦う。
・無理だと判断したら安全を考慮して逃げる。
・なるべく全員で生き残れるよう行動する。
以上。
これが、彼らの考えた作戦の全てである。
DEXが居る限り、作戦通りに行くとは限らないが、マヤ救出に向けて、みんなが一つになるのはいい事だ。
「圭一君、中島君、ちょっといいかい?」
支度が出来ていよいよ出発か、といった所で、二人はメドゥーに呼び止められた。
「どうしたんですか? メドゥーさん」
こっち、とメドゥーは右のドームに入って行く。
確かこっちのドームもレジスタンスの人達の部屋になってるんだっけ。
エレベーターで二階へ。
ある部屋の前。
鍵を開ける。
中に居たのは、メドゥーの弟、マグ・ライバーだった。
「メドゥーさん、ここは……」
「俺の部屋だよ。俺が鍵を開けないと、こいつは出られない」
「あ、牢ってそういう……」
マグは圭一と中島を一瞥した。
「少しは落ち着いたか? マグ」
「落ち着いた、って言わないと、ここから出してもらえないんだろう? 兄さん」
「まあ、朝には出てもらうつもりだったんだ」
マグは座っていたベッドから立ち上がる。
入り口のメドゥーの側に来た。
「……もう、行くの?」
「ああ、マヤを助けに」
「兄さん、自分も」
「お前は後だ。俺達を後ろから支援してくれ。それと」
「分かってる。選ばれし者達には手出ししないよ」
と言いつつ、圭一と中島とは言葉を交わさない。
マグを部屋から出した後、圭一達を連れてメドゥーはアジトの正面玄関へ。
「悪く思わないでくれ。二人とも」
「あ、いいえ。俺達大丈夫です」
「……そうか。マグも君達が悪い人間じゃないって、本当は分かってると思う」
「マグさんも、いい人でしょ?」
「……ありがとう」
外にはもう、車が用意してある。
博士達が待っていた。




