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青い稲妻  作者: 北村美琴
第2部イリア編
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作戦会議その2

 全員モニターに注目している。

 神殿の見取り図が写し出されていた。

 一体どうやって調べた物かというと、DEXが居るかもしれない場所に仲間が一人潜入するのは危険過ぎるので、神殿の壁に虫型の小さいカメラを這わせ撮影し、それを分かりやすくデータ化した物だ。

 しかしこの方法も実は危なかった。

 神殿には罠が仕掛けられているから。

 罠に嵌まってカメラが壊されてしまったら、せっかくの映像が消えてしまう。

 DEXに気付かれる場合だってあるのだ。

 だからあらかじめ数台の虫型カメラを用意し、時間差で遠隔操作していた。

 壁や天井、床など色々な所を動かして。


「おほん」


 一つ大きな咳払いをして、フィールズ博士が手元の機械でモニターを操作する。


「まず、ここが神殿の入り口としよう」


 入り口はモニターの右側、真ん中に書かれていた。


「そして、部屋はこの七箇所」


 神殿は一階建て。

 部屋は入り口から見て、右と左に三箇所ずつ分かれて並んでいた。

 そしてその間には長い通路が一本通っている。

 では最後の一部屋は?

 それはこの通路の先にあるものと予想される。

 されるとしたのは、潜入した虫型カメラが罠に触れて壊されてしまって、これ以上先に進めなかったからだ。

 単純な作りといえば、単純である。

 しかし、問題は内部にある仕掛けの数だ。

 仕掛けが多ければ多いほど、中への突入は困難を極めるし、何よりその数によって、味方が窮地に立たされる場合があるのだ。

 だから罠に関しては、その数と破壊力、何処に位置づけされ、どんな風に襲ってくるのかを、よく把握しておく必要がある。


「え~」


 フィールズ博士の説明が続く。


「いいかい? この神殿にはいくつもの仕掛けが待ち受けている。まず、各部屋のドアの上には左右に首を振るカメラが設置してある。それによって広範囲を調べられるようになっているんだ。難しいが、部屋に入るにはこのカメラに気付かれないように動かなければならない」

「でも……、部屋には鍵がかかっているんですよ、ね?」

「その通りだバリー。だから部屋の中までは調べられなかった。残念だけどね」

「その鍵を開けるのは……、僕がやり、ます」

「うむ。君の力が必要だ。もしこのカメラに侵入者が映った場合、DEXが把握して迎撃用の攻撃を用意するだろう。気を引き締めて行こう」

「はい、博士」

「それからこの通路だが、天井には動く物を察知するライトが数メートルごとに設置されている。もしこのライトに当てられた場合、壁から飛び出して来る幾つもの光線銃の餌食になる」

「じゃ、じゃあ、潜入させた虫型カメラもそれに……」

「いや圭一君。一匹はやられたが、もう一匹は生き残った。が、その一匹が先に進もうとした途端、透明のバリアーに阻まれたんだ」

「バリアー、ですか?」

「そう。天井から床までピッタリと覆う、隙間も無い様なバリアー。そのバリアーに触れた瞬間、虫型カメラは電撃を浴びた」

「……え?」

「そう。それでアウトだ。六つの扉の前は通り過ぎたが、それ以上先に行く事は無理だった。後は直接、わたし達の目で確かめるより他にない」

「そんな……」

「圭一君。済まない。マヤの捕まっている部屋が、はっきりと確認出来ていないのだ」


 博士は悲しそうな顔をして侘びる。


「いえ。いいんです。本番で救い出せれば……。いえ、救い出してみせます。必ず」

「そうだな。けど、力み過ぎてはいけないよ。この神殿自体、もともとは王様のお気に入りで作られた物なのに、あのマッドサイエンティスト達に奪われてしまった。取り戻す事が出来なかったのが悔しい。あの中で、わたしは……」

「フィールズ博士……」


 一瞬、自分の世界へ入ろうとした博士を、クローンが静かに引き留めた。


「おお、いかん。つい話が逸れてしまった。済まんなクローン」

「イイエ」


 どうやらフィールズ博士はあの戦争の時、この神殿で何か大切な物を失ったらしい。

 それが身内なのか、愛する人だったのかは分からないが、とにかく彼の大切な物だったのは間違いないだろう。

 それは事情を知らない圭一や中島から見ても、博士のあの儚そうな表情から容易に把握出来るほどだった。


「ハハハハハ……。さあどうしたみんな。会議に戻ろう」


 努めて明るく振る舞おうとするフィールズ博士。

 彼は思っていた。

 昔の事で、皆を不安がらせてはいけないと。

 さっきは思わず口に出してしまったが、ここは冷静に振る舞わないと、心配する者が出て来るかもしれない。

 だから笑う。

 マヤの父親が言った、『みんなを導く者』としての役割が、博士の中に残っていた。

 そんな彼の気持ちを理解してくれるのは、やはり三人の弟子達ではないだろうか。

 メドゥーが率先して言った。


「さあみんな! 博士のおっしゃる通り、続きを話そう」


 バリーも、


「そ、そうだよ」


 小さい声で言う。

 ジンも、


「そうだべみんな。早くしないと時間が過ぎるばっかだべ。圭一君達も眠いだろうし」


 その弟子達の言葉をフィールズ博士は、うっすらと涙を浮かべて聞いていた。


(……三人とも、感謝する)


 三人にも、神殿で博士がどんな体験をしたのかは伝えていない。

 ただ博士の曇った表情から、話すのが辛そうだと理解したのか。

 話すのが難しいならあえて聞かない。

 それより目の前の事に集中しよう。

 博士の辛そうな顔は、見ていたくない。

 あの時、博士の言葉を遮ったという事は、クローンは知っていたという事だろうか。

 実は違う。

 博士があのまま自分の世界に入ってしまえば、話が進まないから。

 興味はあるけど、現実に戻す方が先だ、と思ったから。

 現実的な考えだ。

 圭一達も何も聞かずに、会議は進んだ。


 真夜中ーー。

 夜も更けて大きな満月が顔を出している。

 細い曇から星々が小さな輝きを照らし、夜風がそっと頬に触れた。

 圭一はベッドの中で布団にくるまっている。

 白熱していた議論も12時前には終わり、博士達の計らいで圭一達はゆっくり休めるように用意された個室で、朝まで心と身体を眠らせる事にした。

 隣の中島からはもう寝息が聞こえる。

 会議の疲れもあるのに、圭一は布団の中でもまだ寝付けない。

 頭はマヤの事だけ。

 それでも睡眠不足になるのは避けたいと、瞼を閉じてみた。

 ゆっくり呼吸をしていたら、いつの間にか眠りに入る。


 ス-ス-。


 二人の寝息。

 窓から覗く月も優しい。

 まるで囁いているかのよう。

 いい夢を見なさい、と。















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