気になる彼女
圭一と中島と別れた夜。
少女は一人、ドーム型の家の中で星を見上げていた。
惑星イリアでもこうやって、仲間達と星を眺めていたっけ。
地球に来て二日目。
一番最初に会った地球人が、心優しい少年で良かった。
もしかすると最初に出会った人が怖い人で、危険な目に合っていたかもしれない。
また自分が宇宙人だと知って、避けて通られていたかも。
話すら聞いてもらえない可能性もあった。
「運が、良かったのかな」
イリアの代表として、地球に向かう使命を帯びた時から、覚悟は決めていた。
でも怖かった。
本当は。
今でも不安になっている。
仕方ない。
現状まだ十三才の少女だ。
不安で、心細くならない方がおかしい。
「でも……」
マヤは暗闇に向かって呟いた。
「みんな。待っていてね。必ずこの星で、愛を探して帰って来る。そしたらみんなの、ううん、私達の願いがきっと叶うわ」
キリッと視線は星を捉えている。
強い決意に溢れていた。
同じ頃、圭一もまた、部屋の窓から星空を眺めていた。
今日の夜は雲が無い。
だから尚更、星が綺麗に見える。
別れ際、中島と交わした会話を思い出す。
「圭一。やっぱ彼女はお前に任せるわ」
「え?」
「気付いてたか? マヤちゃん、お前の事ばっか見てたんだぜ。俺らの呼び方も、お前は圭一、俺は中島君だもんな。しょっぱなから名前で呼ばれるなんて、お前、どんな魅力出してんだよ」
「ど、どんなって。中島何言って……」
「最初に出会った心優しい少年に、心を許したって訳だ。お前、宇宙人だからって、恐がって逃げたりしなかったんだろ?」
「あ、うん。マヤは怪我してたし、普通の人間みたいだったし、何より、ほっとけなかったんだ」
「それだよ。だからマヤちゃんはお前に安心したんだ。この人だったら大丈夫って。俺も協力出来る事はするけどよ、お前が、助けてやれよ」
「中島……」
「へへっ。ちゃんと話は聞かせろよな」
助ける。
マヤを、助ける。
そうだよね。
彼女が何の目的で地球に来たのか分からないけど、悪い子じゃないみたい。
何より、あんな可愛い子。
(ドキン)
彼女の笑顔を思い出す。
(ドキン、ドキン)
圭一の初恋だった。
鼓動が高鳴る。
未だかつて、あんなに魅力的な女の子は見た事が無い。
ああ、今夜は寝れなさそう。
それからほぼ毎日放課後になると、圭一はマヤの居る公園に足を運んだ。
マヤは決まって同じ時刻に、圭一を待つ様になる。
今日も圭一が来る。
それが彼女の楽しみとなっていた。
何をする訳でもない。
公園を出て、近くの駅まで散歩したり、二人でブランコに乗ったり、マヤの家に入れてもらって話をしたり、時間はあっという間に過ぎた。
マヤの言うロケットが落ちた日から、この森にあまり人は近付かない。
念のため、一時は警察まで出動したらしいが、ロケットの形跡が無かった為、雷が落ちたんだろうで片付けられている。
実際あの晩は雷注意報が発令されていて、稲光を見たという人もいた様だ。
木の一部が焼けていた事も確認されている。
偶然にもそんな時に、マヤのロケットが着陸したのか。
あり得ない。
だが現実だ。
何を信じればいい。
実際問題、マヤのロケットはあの晩何処へ消えたのか。
圭一が彼女を発見した時、そこにあったのは穴だけだった。
その事を彼女に聞くと、
「私のロケット? 地面に触れた途端、消える事になっていたの」
「消える? それはあのカプセルみたいに、一瞬で?」
「う~ん。一瞬で、って訳じゃないけど、時間をおいてね」
こういう所がミステリアス。
魅力的な所だ。
未だに地球に来た目的は話してくれないけど、話せる時が来たら話してくれるだろう。
そんな予感がしてた。
それにしても、
中島じゃないけど、彼女が乗って来たロケットくらい、見てみたかったよ。




