呼ばれた訳
何処かの建物の内部らしい。
そこに写されていた物はロボットというより、巨大なメカという感じの物だった。
「メドゥーさん、これは?」
「これは三年前、マヤが地球から戻って来る前に俺達が何とか封じた敵の兵器だよ。が、リーダーだったマッドサイエンティストが死んで、歯止めの効かなくなったロボット達が、この恐ろしい奴を甦らせたんだ」
「奴? 奴ってクローンがちょこっと僕に言っていた?」
「ハイ」
圭一がクローンの顔を見たら、彼女はニコッと笑った。
「ソノ〈奴〉デス。基地デ話ヲシマスト伝エタアノ」
「そう。じゃ、聞かせてもらうね」
「はいよ。こいつはまだマヤが地球に向かう前に敵に造られた破壊兵器でね、愛を忘れ憎しみを覚えた人々の最終兵器、とも呼ばれた、全長三メートルはある巨大メカさ。そのボタン一つ押せば、山一つは吹き飛ぶであろう光線を発射し、又ある時は大地震を起こし、一歩間違えたら周囲の物を焼き尽くす大爆発が起きるかもしれないって言われてる。実際、俺の町は山ごと消された。両親も、友達も、みんなさ」
「メドゥーさん……」
「だからマヤが状況を打開する為に地球に行くって申し出た時、危険だけどそれに賭けるしかなかった。女の子を行かせたくないってのも、あったけどね」
「じゃあマヤは、自分から地球に行くって言ったんですか?」
「ああ。そして彼女は無事に帰って来てくれた。心配してた分嬉しかったよ」
「メド、あの時泣いてたよね」
「ちょっ、バリー、そんな事……。とにかく、その愛の力を借りて奴を封印したんだけど、また甦ってしまった」
「そんな恐ろしい代物が、ですか?」
「そう。恐ろしい代物、破壊爆裂メカ。俺達は通称 DEXって呼んでる」
「DEX……」
フィールズ博士、メドゥー、バリー、ジン、クローンは、何も言わずただ頷いた。
そんな恐ろしい物が、この惑星に存在していたなんて。
想像するだけで怖い。
けどマヤは、レジスタンスの人達は、それでも戦って来たんだ。
「それじゃ、マヤはもしかして、このDEXに……」
「うむ。その通りだよ圭一君。DEXは、地球から愛を持って帰って来たマヤが好きじゃない。だから、ロボット達に連れて来させた。下手な動きを見せたらわたし達に危害が及ぶと脅して」
「な……」
「圭一君、中島君、改めて言おう。マヤを……。わたし達の大事な仲間の一人を、一緒に救ってもらえないだろうか」
圭一と中島は互いに顔を見合せ頷くと、博士達の方に向き直り、力強く言った。
「もちろんです。彼女もこの惑星の平和も、一緒に取り戻しましょう!」
「ありがとう」
フィールズ博士、メドゥー、バリー、ジンと握手する。
クローンが笑った。
「デハ、私カラモ、アナタ達二見セタイ物ガアリマス」
「え?」
クローンの体が光っている。
バリーが補足した。
「クローンはマヤから細胞を少し提供してもらって造られていて、彼女の意識を感じ取る事が出来るんだよ」
「そ、そうなんですか」
「ハイ。オ二人トモ、私ノ手ヲ」
圭一が右手、中島が左手を握る。
ビシュウウウウ。
「これが……」
(私ノ体ヲ通ジタ、彼女ノ思イデス)
心が、重なる。
(圭一、中島君……)
「え?」
聞き覚えのある、懐かしい声。
フワッと優しく、気高く強く。
可愛く、魅力的な少女。
「マヤ!」
「マヤちゃん!」
クローンが自らの体を通して、彼女の意識を圭一達に届けているのだ。
(久しぶりね、二人とも)
「う、うん。会いたかったよ」
(ええ。私もよ)
変わらぬ笑顔。
少し背の伸びたスタイルに、ドレスの様なピンクのワンピースが美しい。
顔は三年前よりキリッとした凛々しさを持ったようだ。
しかし、その彼女が今、水晶に閉じ込められている。
(圭一、大きくなった?)
「そりゃ三年も経ったら、背も伸びるよ。君こそ、大人っぽくなって」
(……見とれてる?)
「うん」
(フフッ、ありがと。中島君も元気そうで嬉しいわ)
「君こそ。と言いたい所だけど、君の身に今何が起きているか聞いたよ」
(そう。博士達の所に居るのね。ごめんなさい。地球からいきなりイリアまで来てもらって。突然の事でビックリしたでしょ? でも、聞いたと思うけど、この惑星には今、最大の危機が迫っているの)
「……うん。マヤちゃん今は大丈夫なの?」
(ありがとう中島君。今側に〈奴〉は居ないから話は出来るわ)
「そう。良かった……」
(奴、DEXは三年前、私が地球から愛を持って帰って来た事をロボット達から教えてもらって、その事を恨んで私を捕まえたの。DEXは敵が環境を破壊する為に造ったメカ。愛の力で自然が甦っては、DEXが存在する意味が無いわ。だから、私と選ばれし者である、あなた達を消そうとしているの)
「マヤ。その、選ばれし者って?」
(地球で私に力を貸してくれた者。特に仲良くしてくれて、愛を教えてくれた者。って意味で、みんなが呼んでいるわ)
「は、恥ずかしいな……」
(……そうね。その、二人とも、こんな大変な事に巻き込んでしまって、本当にごめんなさい。でも、もう、時間が無いの。私の、みんなの思いを受け止めて。お願い)
圭一達はその時、彼女の瞳に光る物を見た。
(涙……)
一粒の綺麗な雫が落ちる。
ポトッ。
失われつつある現実ーー。
けれど、決して諦めない。
諦めたら全てが終わる。だから、
「分かった」
「うん。だからそんな目をしないで、マヤちゃん」
(本当? ありがとう。う……)
「マヤ!?」
突然、マヤとの交信が途切れた。
と同時にクローンの光も失われる。
「一体どうしたんだ? おい圭一、見ろ!」
「えっ? クローン、クローン!」
クローンの目が閉じられている。
その場で、バタッと倒れた。




